2025年5月13日火曜日

第24話 大変な日の終わり、新たな路の始まり

呪を言祝ぐ冒険者(FF14二次創作小説)
第24話 大変な日の終わり、新たな路の始まり

第24話 大変な日の終わり、新たな路の始まり


「チョコボさんを……預ける……?」
 チョコボ屋さんの言葉を反芻するだけの、間の抜けた返答をしてしまうと、彼は「ええ、冒険者さんさえ良ければ、このチョコボを預かって欲しいのです」と、首肯を返されてしまった。
 私はその意味が頭の中で理解できるまでに時間が掛かってしまい、不思議そうに小首を傾げていると、チョコボ屋さんは小さく空咳を挟んで、チョコボさんを見つめた。
「その子、すっかり冒険者さんに懐いてしまっているみたいでして。もう片時も離れようとしないものですから、仮にチョコボポーターとして活動させるにしても、支障を来たしかねない、と思いまして」チョコボ屋さんは困っていると言うよりは、どこか嬉しそうな語調で続けた。「異例ではあるのですが、今回の依頼の報酬と言う事で、そのチョコボを預かって貰う、と言う事は出来ないでしょうか?」
「え、えと、その……」話が少しずつ呑み込めてきて、私はようやく慌て始めた。「そ、その、預かりたいのは山々なんですけど、私、チョコボと一緒に生活できるほど裕福ではないと言いますか、そのぅ……」
「チョコボをバディにしている冒険者さんは皆、普段チョコボ留にてチョコボを預けていますし、普段のお世話はチョコボ屋の業務ですので、そこはお気になさらず。ただ、冒険する時に、彼が一緒だと、互いに心強いのではないですか?」
 チョコボ屋さんがチョコボさんを見つめると、チョコボさんは喜びを露わにするように、「クエ! クエ!(ぼくもウウイちゃんと一緒だと、とっても嬉しい!)」と、鳴いた。
 私は戸惑ったままアワアワしていたけれど、チョコボさんのワクワクした視線、そしてチョコボ屋さんの優しい眼差しを受けて、やっと落ち着きを取り戻した頃には、もう回答は定まっていた。
「でしたら、はい。喜んで、お受けしたいと思います!」
「クエーッ!(ヤッターッ!)」「それは良かった。ではこちらに契約のサインをお願いします」チョコボさんの歓喜の鳴き声と、チョコボ屋さんのキリッとした声が同時に聞こえて、私はまたアワアワしそうになってしまうのだった。

◇◆◇◆◇

「――君がウウイ・ウイ君かね?」
「え?」
 すっかり騒ぎが落ち着いたブラックブラッシュ停留所に、不滅隊の隊士だと思しき装備を纏ったヒューラン族の男性がやって来て、私に向かってそう尋ねた。
 身なりがしっかりしてて、腰に差している片手剣も年季の行った代物だ。ぱっと見でも、相当位が高い人なんだろう、と推察できた。
「えと、はい。私がウウイ・ウイですが……」
「そうか、やはり君が」不滅隊の隊士は確認するように頷くと、不滅隊の敬礼を見せて、深々と頭を下げた。「此度の一件、君の助力のお陰で無事に解決できたと伺っている。感謝を。本当に助かった。有り難う」
「あ、いえっ、そのぅ、私も無我夢中で、あの、えぇと……こ、こちらこそ……」
 不滅隊の隊士直々に頭を下げてお礼を言われるなんて出来事、未だかつて経験した事が無くて、さっき以上にしどろもどろになってしまった。
 不滅隊の隊士はそんな挙動不審な私に笑いも呆れもせず、うんうんと相槌を打つように頷き返すと、ホルガーさんに視線を向け、今度は一目で分かるぐらい呆れ果てた表情を覗かせた。
「で、お前は何だって持ち場を離れてこんなところで油を売っているんだ? お前、ローズ連隊の隊士だろ。冒険者の尻を追ってないでとっとと持ち場に戻れ馬鹿者!」
 カカァーッ! と一喝する不滅隊の隊士に、ホルガーさんは聞く耳持たないと言った風情で片耳を塞ぎながら「アァーッ! うっせぇうっせぇ! 手柄を横取りした上に小言を言ってくるな馬鹿野郎!」と悪態を返し始めた。
「俺の方が組織的に上官だと言うのに何だその態度は! これだから銅刃団は……!」「アァ!? 不滅隊の方が偉いなんざ誰が決めたんだ誰が! 民に寄り添う俺様達の方がよっぽどありがてぇだろ!」「何だと!?」
 突然目の前で取っ組み合いの喧嘩が始まって、私は呆然としている事しか出来なかったけれど、咄嗟に「や、やめてくださーい!」と間に入ってスタッグホーンスタッフを掲げると、二人の顎に丁度クリティカルヒットしたみたいで、同時に呻き声が聞こえて、二人ともうずくまってしまった。
「あたた……す、済まない。この馬鹿者には後で謝罪を要求するとして、本題は君だ君」不滅隊の隊士は顎を擦りながら立ち上がった。「今回の一件、既にラウバーン様の耳に届いていてな。そのような勇猛な冒険者であれば、ぜひ不滅隊の冒険者部隊として活動してみないか? と君に言伝が」
「ええ? 不滅隊の……冒険者部隊……?」
 どんどん話が大きくなっていってる気がして、段々と尻込みしつつあった。
 チョコボさんを預かるだけでも大事なのに、そこから更に不滅隊にも籍を置けるなんて……冒険者を始めて、ここまで厚遇を受けると、まるで詐欺にでも遭っているかのような、ふわふわした夢心地のような感覚に満たされてしまう。
 とは言え、だ。私はそこまでの厚遇を受けるような冒険者ではないと自覚している。ここは丁重にお断りしよう、そう思って口を開きかけると、チョコボ屋さんが、「あ、」と手を打って私の発言を遮った。
「冒険者さん、申し訳ありません。話が前後してしまうのですが、チョコボを預かるには、不滅隊などと言ったグランドカンパニーに所属していないと、そもそも許可が下りないのでした」ペコリと頭を下げるチョコボ屋さん。「なので大変申し上げ難いのですが、冒険者さんには不滅隊に入隊して頂くしか……」
「あ、え、あぅ……そういう事なら……」
 退路が断たれてしまい、為す術も無く頷いてしまうと、不滅隊の隊士は、「そういう事情なら、うむ。順序が逆になるが、こちらでチョコボ飼育の許可は申請しておこうではないか。後日で構わないが、ナル回廊に在る不滅隊司令部まで来てくれ。手続きをそこで済ませれば、君は晴れて不滅隊の冒険者部隊の一員だ。宜しく頼むぞ!」
「は、はひ……」
 不滅隊の隊士は言うだけ言うと、ウルダハの装束を纏ったチョコボに跨って、颯爽とウルダハへの帰途に着いた。
 残された私は、何だかとんでもない事になりつつある事に、疲れと、そしてちょっぴりの期待の混ざった溜め息を零して、チョコボ屋さんとホルガーさんに向き直った。
「あの、そのぅ……何だか夢みたいですけど、お二人のお陰です! 有り難う御座います!」ペコリと頭を下げ、チョコボさんの首筋を撫でた。「チョコボさんも、ありがとね」
「クエー!(宜しくね、ウウイちゃん!)」嬉しそうに頭をこすりつけてくるチョコボさんに、私も目を細めちゃう。
「おう、何だか釈然としねーが、まぁ何だ。お嬢さんの手柄になったなら、まぁ……まぁ、まぁ……良いか……いや良くねーが……」本当に釈然としてない様子のホルガーさんに、思わず笑いが込み上げてきそうだった。
「それでは私はこれで。冒険者さん、またホライズンにお越しの際は、顔を見せに来てくださいね。いつでもチョコボと一緒にお待ちしております」
 そう言ってチョコボ屋さんがチョコボに跨って帰って行くのを見送って、ホルガーさんも面倒臭そうにホライズンに向かって歩いていくのを見送ると、チョコボさんと一緒に、私もウルダハへと帰途に着くのだった。
 大変だった一日はそうして幕を閉じる。
 そして明日からは、もっともっと忙しい日々が始まるのだろう。
 そんな期待とも付かない予感に、私は顔を上げて、笑みを浮かべるのだった。

🌠後書

 約2ヶ月振りの最新話更新です! 大変お待たせ致しましたーッ!!!!(いやほんとにw)
 ここ2ヶ月はGameに現を抜かしてたのもそうですが、絶対にお仕事に休まず出勤する! と言う頑張る期間でしたので、とにかくお仕事のストレスを全部Gameで発散して、とにかく休まず頑張り続ける為に、執筆活動自体を暫くお休みしてた次第でして。
 幸いあれからほぼほぼお仕事を休まず出勤できるようになったのと、ちゃんと朝起きて朝ご飯の準備をして朝ご飯をしっかり食べる習慣が付いた事で、体調もここ2ヶ月ほど好調と言いますか、風邪を引いたり、寝込んだりと言う事も無いので、少しずつ今の生活に慣れてきた感じです!(´▽`*)
 と言う私の事情はこの辺にしてw 約2ヶ月も間を空けてしまい、大変申し訳ありませんでした! 今後は少しずつ執筆活動も再開して、またコツコツ創作物を投稿できたらと思っております!┗(^ω^)┛
 さてさて今回のお話に就いて少しだけ。チョコボさんを仲間にしたかったので、流れでこういう形にして不滅隊に入隊させましたが、元々不滅隊には入隊する予定だったと言いますか、どういう形でこの物語を完結させようか、と考えた時に、不滅隊に入るしかないな! となった次第でw(詳細は全てカットしていく奴w)
 言い方はアレですが、一番きな臭く、一番冒険者の層が厚そう、と言う理由もとても大きいです。これからウイちゃんが不滅隊でどういう活躍をするのか、ぜひ見守って頂けると幸いです!(´▽`*)
 と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!

※2025/05/30校正済み

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    風雲急を告げる予測変換ッ!
    こうして続きを拝読できる喜びをかみしめております。
    すっかりたくましくなったウウイちゃん、これからの活躍を楽しみにしています!

    今回も楽しませていただきました~
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. >とみちゃん
      感想コメント有り難う御座います~!(´▽`*)

      風雲急を告げる予測変換!wwww(笑)
      いやもうほんと大変お待たせ致しました…!w またボチボチ更新して参りますので、お付き合い頂けますよう宜しくお願い致します!(*- -)(*_ _)ペコリ
      ウウイちゃん、作中ではそれほど時間が経っていないのに、モリモリたくましくなっちゃって…(シミジミ) どうぞこれからも彼女の行く末を見守って頂けると嬉しいです!(´▽`*)

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみにー!

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