2025年1月4日土曜日

第12話 もう一度、冒険者になる為に

呪を言祝ぐ冒険者(FF14二次創作小説)
第12話 もう一度、冒険者になる為に

第12話 もう一度、冒険者になる為に


「昨夜約束した、ウイが呪術を使えないと言う件をまず解決しよう」ガージアさんが樹木の傍に置いたのは、木人と呼ばれる戦闘の練習に利用される的だった。「これに思いっきり呪術を当ててみろ。俺の分かる範囲で見てやる」
「え……? で、でも、今は早くリムサ・ロミンサに戻るべきじゃ……?」
 困惑してしまって尋ねてしまったが、ガージアさんは小さく頭を振って否定した。
「お前が機転を利かせてくれたお陰で、時間的猶予は充分に有る。ならば先に現在の戦力を正確に把握した方が有意義だろう。この後、お前も戦闘に参加する可能性も有るのだからな」
「ええっ!? わたっ、私じゃ足手纏いになるだけですよっ!」思わず悲鳴が上がってしまう。「魔力増幅薬を飲んでも一時的にしか呪術を使えないですし……」
「お前の話を疑っている訳じゃない。その魔力増幅薬を使わずにどれほどの呪術が扱えるか確認したいだけだ」ガージアさんは腕を組んで不動の態だった。「戦闘に参加と言っても、目眩ましや気を引くぐらいは可能なのか、それとも……ともかく、約束は守りたい。少なくとも、俺は返せる恩は返してから別れたい」
 ガージアさんは真剣な眼差しで私を捉え、それ以上引き下がる気は無さそうだった。
 私は困惑したままセクレアさんに視線を向けるが、彼女は企みが有りそうな笑みを浮かべて頷くだけで、私を味方してくれる訳ではなさそうだった。
「そ、それでは失礼して……」
 ポーチに隠していた片手呪具であるウェザードセプターを取り出して、木人に向かって構える。
 集中するように呼気を整えて、丹田に渦巻く魔力の流れを意識して、丹田から胸へ、胸から肩へ、肩から腕へ、腕から指先へ、指先からウェザードセプターの先端へ――――
「闇に生まれし精霊の吐息の凍てつく風の刃に散れ! ブリザド!」
 一息に詠唱を唱えると、ウェザードセプターから冷気の塊が飛翔し、木人を凍り付かせる。
 ……が、威力の低さに、木人には霜が降りる程度のダメージしか与えられず、私は思わず落胆の吐息を落としてしまう。
「こんな感じなんです……」悄然とガージアさんに振り向く。「これでは、戦闘に参加なんてとても……」
「…………」ガージアさんは私を……じゃなくて、私の武器である片手呪具、ウェザードセプターを見つめたまま怪訝な表情をしていた。「お前、呪具はそれしか持っていないのか?」
「え? は、はい……呪術がこんなレベルですから、これで充分かなって……」
 ブリザドもそうだし、ファイアもマトモに扱えないのに、呪具だけ良くしたところで、宝の持ち腐れだろうと思ってのセリフだったのだけれど、ガージアさんは得心したとばかりに頷き、ポーチを漁り始めた。
 取り出したのは、長い柄の呪具。両手呪具と呼ばれる武器だ。
「スタッグホーンスタッフと呼ばれる呪具だ。これを使って呪術を使ってみろ」そう言ってガージアさんは両手呪具……スタッグホーンスタッフを手渡してきた。「さっきと同じブリザドで良い」
「え……でも……」受け取ったは良いけれど、私には分不相応な物だと思って返そうとするも、ガージアさんは首を横に振って受け取ろうとしなかった。「良いんですか……?」
「彫金師ギルドの依頼で製作した物だが、お前が良ければ受け取ってくれ」ガージアさんは腕を組んで微かに微笑んだ。「呪術士に限らずだが、鍛錬を積むばかりで武器の更新を怠るのは良くない。己の練度に合った武具を装備するのも、冒険者として忘れてはならない事だ」
「己の練度……」
 あんな霜しか降りないようなブリザドや、鼻先を焦がす程度のファイアしか撃てない私の練度に、この両手呪具は合わない気しかしないけれど、ガージアさんは何かを確信しているようで、早く撃てと視線で訴えてくる。
 私はウェザードセプターをポーチにしまうと、初めて扱う両手呪具を両手で握り締めて、構える。
 今まで片手呪具で呪術を行使してたからか、構え方自体に違和感が有ったけれど、意外としっくりくる触り心地だった。
 いつも通り。今まで通りに、丹田に渦巻く魔力の奔流を、胸へ、肩へ、腕へ、指先へ、流すように集中すると、全身が熱くなるような、何かが活性化する感覚が走り抜けた。
 スタッグホーンスタッフの先端に集まる魔力の感覚が、今までウェザードセプターを使っていた時とは比べ物にならない程に増えている。桁違いと言っても良い。
 まるで魔力増幅薬を飲んだ時のような、漲る魔力の流れに、私は抗わないように意識を集中させて、詠唱を始める。
「闇に生まれし精霊の吐息の凍てつく風の刃に散れ! ブリザド!」
 スタッグホーンスタッフの先端から迸り走り出た冷気の塊は、確かに木人に直撃した。
 普段ならば、直撃した冷気の塊は、霜を降ろす程度でダメージにもならなかったそれは、明らかに木人を凍り付かせ、バキバキと音を立てて亀裂を走らせていた。
 一番威力の低いとされる呪術であるブリザドで、木人を凍り付かせるだけでなく、表面をバキバキに割り、確かな威力を伴って放てた事に、形容の出来ない感情が腹の底から沸き上がった。
「ガージアさん! これっ、これっ!!」
 思わずスタッグホーンスタッフを抱えてぴょんぴょん飛び跳ねて感動を表現すると、ガージアさんは小さく首肯を返すと、穏やかな表情で口を開いた。
「言っただろう? 練度に合わせて武具は更新しろと。お前はその呪具……ウェザードセプターではもう足りない程の呪術を扱えるにも拘らず、更新しなかったばかりに威力が出なかった、ただそれだけの話だ」ガージアさんは、私の頭をポン、と撫でた。「これだけの威力が出るブリザドを放てるんだ、もう戦力外だと主張する事は無いな?」
 ガージアさんが柔らかく微笑んだのを見て、私は涙が出そうになるほど嬉しくて、「はいっ!」と大きく頷いた。
「一目でそれだけ見抜けるたぁー、流石だなガージア」セクレアさんが遠巻きに眺めながら拍手をしていた。「なるほどなー、武器の更新が出来てなかったから、が原因だった訳か。オレは呪術が扱えないって言うからどんなもんかと思ってたが、なるほどなー。また賢くなっちまったぜ」
「お前に呪術士に対する見識……いや、呪術士の扱う呪具に対する見識が有れば、俺でなくても気づけただろうな」ガージアさんはすぐに柔らかかった表情を引っ込めて、醒めた瞳でセクレアさんを捉える。「ウイが呪具をポーチにしまっていたのも一因だろう。装備していたら、一目で気づいていたんじゃないか?」
「くく、どうだろうなぁー」含みの有る笑みを浮かべるセクレアさん。「ともあれ、だ。ウイが困ってた問題はこれで解決したんだな? これでもう冒険者として活動する事に憂いは無い、って事で良いんだろ?」
 セクレアさんに釣られるように、ガージアさんも私を見つめて答を待っている。
 呪術士なのに、呪術が全然扱えなかった問題が、こんな簡単に解決されると思ってなくて、私は湧き上がる感情を抑える事が出来なくて、言葉に出来ないまま何度もコクコクと頷き返した。
 呪術士として、冒険者稼業はもう歩めないかもって思ってたのに。セクレアさんが連れ出してくれたお陰で。ガージアさんが見てくれたお陰で。また、呪術士として活動できると分かって、嬉しさで、有り難さで、何度感謝してもしきれなくて。
「あっ、有り難う御座います! お二人のお陰で、冒険者、できますっ!」
 今は、頭を下げる事しか出来なかったけれど。
 この感謝をいつか。ううん、今すぐにでも。冒険者として、呪術士として、返していきたい、いかねば!
 先輩冒険者のお二人に、どれだけお役に立てるか分からないけれど、冒険者として、自信を持って隣に立てるように、やっと第一歩を踏み出せたのかなって思うのだった。

🌠後書

 明けましておめでとうございます! 今年の書き初めはFF14二次創作小説からスタートです!(´▽`*)
 今回は2週間ほどお待たせしてしまいました…! 先週はネトゲ百合のクリスマス短編更新したからゆるして…!ww(笑)
 と言う訳で今回のお話。たぶんGameの方を知ってたら「そりゃそーだよ!w」って言うようなネタになりますw Lv1(アイテムレベル1)の武器と、Lv20(アイテムレベル20)の武器なら、そもそも威力が全然違うのは当たり前と言う…!ww
 Gameを程々にPlayされてたら、武具の更新は当たり前のようにしていくものですけど、そういうのが当たり前じゃない人にとっては、こんな感じなんじゃないかな?と思ってのお話でした。
 言うてこの辺はリアル寄りではなくGame寄りの話なので、実際リアリティに即した話であれば、武器を強くしたからって力が強くなる訳ではないのはそれはそうw この物語は出来る限りFF14の設定(そんな設定有るか知りませんが)に即したお話に仕上げたいので、こんな感じにしました。
 と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました! 今年もどうか宜しくお願い致します!(*- -)(*_ _)ペコリ

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    本当はできる子だったのウイちゃん!
    装備更新のタイミングって難しいよね!ってことでよろしいか?wこれからは潤沢な資金をお持ちのパパにお願いして常に最強装備でブイブイいわせちゃおーvv

    戦力に目処がたったLightパーティーの皆さんどうなることやら…めちゃめちゃ楽しみですw

    今年も楽しいお話お願いしますね!

    今回も楽しませていただきました!
    次回も楽しみにしてますよーv

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    返信
    1. >とみちゃん
      感想コメント有り難う御座います~!!(´▽`*)
      返信大変遅くなって申し訳ないです!!!

      本当はできる子だったウイちゃん!ww
      ですです!ww 装備更新、うっかり忘れると全然火力が出ない事が有ったりもするので、その辺のお話でした…!w 潤沢な資金をお持ちのパパwww 遂に帝国のお金に手を付けてしまうの!?!?!?wwwwww(笑)

      Lightパーティ、遂に組めちゃいましたね…! 今後も彼らか目を離さずに見守って頂けると幸いです!(´▽`*)

      今年もモリモリ更新して参りますぞー!┗(^ω^)┛ こちらこそ今後とも宜しくお願い致します!(*- -)(*_ _)ペコリ

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~!!(´▽`*)

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第14話 可能性を視て、未来を書き換えて

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