2025年10月14日火曜日

第28話 変える力とお金の力〈4〉

呪を言祝ぐ冒険者(FF14二次創作小説)
第28話 変える力とお金の力〈4〉

第28話 変える力とお金の力〈4〉


「お金の力で……ウルダハを、手中に……?」
 ヒューラン族のおじ様こと、クルシドさんは私の呆然とした反芻に、悪辣に見えた笑顔を引っ込ませて嬉しげに咳払いを挟んだ。
「うん、うん、その瑞々しい反応、やはり雇って正解だったね、うん」クルシドさんは噛み締めるように何度も頷く。「そうだとも、だからこそウルダハには何かと敵が多くてね、うん。サクラコ君のような凄腕の冒険者を雇っていると言う訳だね、うん」
「凄腕の冒険者……!」
 キラキラした眼差しでサクラコさんを見つめると、彼女は居心地悪そうに空咳を落とすと、クルシドさんに改めて視線を向けた。
「旦那様、そういう話は誰に聞かれているとも分かりませんので」
「うん、そうだね、その通りだ。さて、ウウイ君と言ったね? 付いてきたまえ、特別にワシの部屋に招待してあげようではないか。なに、時間はたっぷり有る、しっぽりと……ね」
「…………」
 クルシドさんがどこかいやらしさを感じさせる視線で私を一通り見た後、嬉しそうな笑声を零しながらプラチナミラージュに入って行く。
 その視線に言い知れぬ悪寒を感じて身震いしてると、いつの間にか隣に近づいていたサクラコさんが、耳元でそっと囁く声が聞こえた。
「警告はしましたよ? 殺されても……文句は言わないでくださいね」
 ふぅ、と懊悩するような吐息を吹きかけられ、私は思わず「うひゃぁっ!」と悲鳴を上げて跳び上がってしまった。
 サクラコさんはそんな私を後目に、くすりと初めて微笑を覗かせた後、何も言わずにクルシドさんの後を追ってプラチナミラージュへと入って行く。
 私は突然の出来事に心臓を跳ね躍らせながら、ゴクリと生唾を呑み込み、二人の後を追い駆けてプラチナミラージュへと足を踏み入れて行く。
 中はウルダハ随一のカジノなのだが、二人はそれらに興味が無いのかルーレットやディーラーには目もくれず、通路の奥の奥、カジノ客が寝泊まりする客室へと入って行った。
「うわぁ……」
 中も、ウルダハ随一のカジノの客室だと一目で分かる豪奢な造りで、どれも高級な材質で作られているんだろうなぁと、触らずとも見るだけで分かる高級感と煌びやかな光沢に包まれていた。
 クルシドさんはラザハンのチェアに腰掛けると、ローテーブルに置かれていた安物っぽい煙草を銜えて、大きく吐息を吐き出した。
 サクラコさんは彼の隣に立ち、煙を纏いながらも咳き込みもせず、静かに佇んでいる。
「お金の力でウルダハを手中に収めようとすると豪語する者が、護衛をたった一人しか付けていないと言うのに驚いているかな、うん?」
 クルシドさんが穏やかな表情でそう呟いたのが聞こえ、私は思わず「え? あ、えと、そんな事……」と生返事をしてしまった。
「うんうん、それもその筈なんだ、ワシは一介の商人であって、豪族でも貴族でも無い、ましてや武人でも冒険者でも無いのだから。だからね、ウウイ君」クルシドさんの目つきが鋭くなった。「君がどうしてワシに目を付けたのか、とても気になるんだよね、うん」
「どうして……? えと、それは……」
「死相が視える、だったか。ワシはね、君がワシを殺しに来たのだとばかり思っていた訳だが……本当に、ただ、ワシが殺される情報を掴んで、ワシを助けに来た……と言う事で、間違いないのかな?」
 空気が澱んでいる気がする。クルシドさんの言葉を、すんなり呑み込めない。
 そもそも、どうしてクルシドさんが殺されたら、大変な事になるんだろう。それがまず、分からなかった。
 でも、今はそれが少し分かる。彼は、ウルダハをお金の力……ギルで、どうにかしようとするぐらいの、とんでもない財力を持っている……と言う事。
 確かに、一国を傾けるだけの財力が有る人が死んでしまえば、その財産はどうなってしまうのか。考えなくても、それは確かに、「大変な事になる」のは想像に難くない。
 疑問は一つ片付いた。けれど、その片付いた疑問に付随する形で、新たな疑問が生まれる。
 その、巨万の富を、一介の商人が、どうやって築いたのだろう、と言う事。
「…………君、“ワシの素性を知っている”のでは、ないかね?」
 クルシドさんの冷たい眼差しが私の意識を貫いた瞬間、気づいたら床に叩き伏せられていた。
 うつ伏せに体を押さえつけられて、呪術も行使できる状態ではなくなった。
 首を思いっきり鞘で押さえつけられて、とても苦しい。
 見えなかったけれど、状況判断で分かる。私は今、サクラコさんに鞘で捕縛されている。
「ぐ、ぇ……ま、まっ、て、くださ……い……!」
「サクラコ君、絞め過ぎだよ絞め過ぎ。このままだと洗い浚い吐く前に死んでしまうよ、うん」
「もとより殺すつもりだったのではないですか?」
 上手く呼吸が出来なくて、視界が明滅する。
 そんな私の状態など意に介した様子も無く、クルシドさんとサクラコさんは淡々と会話を続ける。
「それはそうさ、こんな怪しい存在を生かしておく訳にはいかないだろう、うん。計画がどこからか漏れたと言う事だろう? ちゃんと吐かせてから、綺麗に葬り去るべきではないかね?」
「……そうですね。旦那様の計画がどこまで漏洩しているかによっては、今後の予定に支障を来たしますし」
「うんうん。それは困るんだよね、うん。ウウイ君、まずはその、死相が視えたと言った相手の名前は言えるかな? 勿論、言えないなんて言われたら、きっと君は、今後生きていく上でとても大変な事になると思うんだけど、うん」
「…………!」
 呼吸が、出来ない……ッ!
 視界が段々と暗転していく。迂闊だった、何て言い訳は通じない。もっと危機意識を持つべきだった、もう少し思慮深く行動すべきだった……もうちょっとだけ……サクラコさんの…………警告に………………耳を……………………かた、む……け………………
「……だから言ったのに」
 意識が遠退いていく中で、サクラコさんが嘆いた声が、微かに聞こえたような気がした。

🌠後書

 約1ヶ月半振りの最新話更新です! 大変お待たせ致しましたーッ!(定期)
 と言う訳で絶賛FF14の課金が切れてる状態なので、Blogで先行公開と言う形に! 前回からだいぶ間が空いてしまってほんと申し訳…!w ずっとGameが楽しいモードに入っちゃって、創作脳がすっかり消え去ってしまっておりました…w
 さてさて、今回のお話のお話。ウウイちゃーん?! まぁ変な話だと思って首を突っ込んだらそうなるのも止む無しな世界観ですよねエオルゼアって…(当たり前体操)
 ご愛読ありがとうございました! 次回の灯幽夜影先生の作品にご期待ください!
 じゃないんだよ!ww ウウイちゃん、死んじゃった可能性は捨てきれませんが、もう少し物語は続きます。もう少し? まだまだ続くと良いなぁ…!w
 と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!(´▽`*)

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    大変お待ち申し上げておりましたーッ!
    もう読めないかとも思っておりましたので喜ばしい限りでございいます。

    やっぱりやばかった、シヌヒトw
    でも大丈夫そのウウイちゃんは影無者でリットアティンさんが着ぐるみ着用でウウイちゃんのふりをしているのさ!
    そして東の空にはガイウスインパクトがッ!!!
    負ける要素は見当たりません。

    続きがめちゃめちゃ気になるところではありますが、妄想を巡らせつつ気長にお待ちしています。

    今回も楽しませていただきました!
    次回も楽しみにしてますよーv

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    1. >とみちゃん
      感想コメント有り難う御座います~!(´▽`*)

      大変お待たせ致しましたーッ!
      もうそんな想いにさせちゃうぐらいお待たせしてしまって大変申し訳…! 今後ものんびりではありますが、コツコツ更新して参りますゆえ、どうかお待ち頂けたらと思います!(´▽`*)

      リットアティンさんはもう体格的に無理有り過ぎるでしょwwwwwwwwwwww(笑) もうこの一文だけで腹抱えて笑わせて頂きましたwwwwwwwww(笑) ガイウスインパクトも来ちゃったらもうウルダハ終わりだよこれwwwwwww(笑)

      なるべく次回は早めに更新して参ろうと思いますゆえ、どうか妄想をモリモリ巡らせてお待ち頂けたら幸いです~!(´▽`*)

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみにー!(´▽`*)

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