020.竜征群〈4〉
常軌を逸した事態であっても、常軌を逸したハンターがそれを攻略していく。
無尽蔵とも言える物量で押し寄せる鳥竜種の群れを破砕していくハンター達の甲斐有って、津波とも思えた鳥竜種の群れもやがて半分が屍と化そうとしていた時だった。
「――そりゃそーだよな、雑魚だけの群れな訳がねェよな……!」
空中を飛び回りながら鳥竜種の群れを昏倒させ続け、前へ前へと進んでいたリスタが目撃したのは、鳥竜種の群れを追い立てる、鳥竜種。
ドスランポスやドスマッカォ、ドスイーオスなどの、比較的小型でありながらも、群れを統率する立場に有る鳥竜種だけに非ず、怪鳥イャンクック、毒怪鳥ゲリョス、眠鳥ヒプノック、狗竜ドスジャギィ、彩鳥クルペッコなどなど、あらゆる地方の鳥竜種が纏めて駆け込んできていた。
一頭一頭でさえ相応の対処が求められる大型モンスターが、群れを為して押し寄せる地獄。リスタは空中で体勢を整えると、犬歯を剝き出しにして笑み、目前に迫っていたイャンクックの頭を小盾で殴り飛ばした。
「クワワァ!」悲鳴を上げるも、すぐに体勢を立て直して走り続けるイャンクック。
「チッ、敵視を向けるのも一苦労だなこりゃ」
イャンクックを殴り飛ばしたその衝撃で更に飛翔し、空中から襲い掛かろうとしていたゲリョスの頭を蹴り上げ、イャンクックの頭上に舞い戻るリスタ。
「重たい一撃をご所望のようだな?」
全体重を載せた一撃を、イャンクックの脳天に叩き落とす。衝撃はパラボラ染みた脳天を直接揺さ振り、イャンクックは悲鳴すら上げずに頭を地面に叩きつけて、昏倒した。
イャンクックの頭の上に着地したリスタは、迫り来る大型モンスターの群れを見やり、小盾を構え直す。
「ひー、ふー、みー……ザッと二十頭ってところか。大型も一頭は一頭だ、とっとと叩きのめして次に行かせて貰うぜ?」
挑発するように笑むリスタに、併し大型モンスターの群れは意に介した様子も無く突貫してくる。ただ駆け込んで来るだけで押し潰される程度の羽虫に、モンスターは注意すら払わないと言う事だ。
リスタはイャンクックの頭を足蹴に跳び上がり、今度はドスマッカォに小盾の一撃を喰らわせようとして――咄嗟に体を捻って小盾を虚空に殴りつけた。
爆発が起こったかのような衝撃音が弾け、リスタは空中を滑空しながら、己の小盾を震わせるほどの衝撃を走らせた得物を見やる。
そこには、両手に噴射機構を備えた、見た事も無い武器を手にしたハンターが、怪訝な面持ちでリスタを見やっていた。
「誰だテメエ、そりゃ俺の獲物――」「俺の邪魔をするな、失せろ凡骨」「――――は?」
見た事も無い武器――穿龍棍を巧みに操り、空中を滑走しながらドスマッカォを殴りつけ、その初撃だけでドスマッカォを遥か彼方まで吹き飛ばし、その軌道上に居たモンスターを全て薙ぎ倒していく。
リスタと同年代と思しき少年は、リスタに一瞥すらする事無く、穿龍棍の噴射機構を自在に駆使してモンスターを次々と昏倒させていく。それを空中で体勢を整えながら眺めていたリスタは、血管を幾つか千切ったような、般若のような顔になりつつあった。
「だッ、れッ、がッ、凡骨……だとテメエッッ!!」
ヒプノックの頭の上に着地と同時に踵を落として一撃で昏倒させると、再び大きく跳躍して穿龍棍使いの少年が狙っていたドスジャギィを先に小盾で昏倒させるリスタ。
穿龍棍使いの少年は鬱陶しげにリスタを一瞥すると、再び端的に「……聞こえなかったか? 邪魔だ、消えろ凡骨と言ったんだ」と告げ、リスタが次に狙いを定めていたゲリョスの頭を殴りつけて昏倒させた。
「おいおいおい、人の獲物を奪っておいて何だそりゃ」穿龍棍使いの少年が次に狙っていたクルペッコを一撃で昏倒させて、空中で彼と向かい合うリスタ。「テメエが失せな、ここは俺の狩場だ」
「は?」穿龍棍使いの少年が険しい表情を見せる。「盾しか持ってねえ凡骨が何言ってんだ?」
「おいおい、優秀な武器を持ってるだけで優秀なハンター気取りかよ、良い武器でちゅね~中身は伴ってねェようだがな」
穿龍棍使いの少年は地面に降り立ち、リスタも彼の真正面に降り立ち、互いにメンチを切り合う。
「やんのか?」「アァ?」
戦場の真っただ中で睨み合う二人に、昏倒から回復した大型モンスターが、一様にその姿を見咎めた瞬間、怒号を張り上げて突進を開始する。
ラオシャンロンから逃げ惑っていたが、それは相手が己より遥かに強大だからこそ逃げるしかなかっただけで、この程度の雑魚であれば一撃で葬ってくれようと、大型モンスターが一斉に襲い掛かったが、
「「うるせェ!!」」
リスタも穿龍棍使いの少年も、振り向きもせずに、一撃で大型モンスターを昏倒、どころか、一撃で頭蓋の形状を変形させる程のパワーをぶちまけ、大型モンスターはたった一撃でその命を失う事になった。
それがどういう事なのか理解できない大型モンスターの群れは、“何故か”死んでしまった大型モンスターを無視して、二人に続々と襲い掛かる。
常人であれば死を覚悟せねばならない状況にも拘らず、二人は互いを睨み据えたまま、どうこいつを料理してやろう、と言う怒りに支配されたままだった。
「俺の邪魔をするな」「テメエが俺の邪魔なんだよ」「モンスターより先にテメエを潰してやろうか」「出来るのか? 先にテメエを叩きのめしてやっても良いんだぜ?」「何だと?」「やんのか?」「「アァ!?」」
互いに発声する怒気だけで、大型モンスターは一瞬動きが制止する。
この小さな存在が秘めるポテンシャルに、その絶大なるパワーに、少しずつ気づきつつあった。
これは、この小さな存在は、全力で掛からねば、こちらが仕留められる存在だ、……と。
「――八十四」「ア?」
リスタの呟きに、穿龍棍使いの少年が怒り交じりに返す。
「俺の戦果だ。テメエは?」「……何で言わなきゃならねェ」「そか。俺の不戦勝って事で良いな?」「アァ!?」「言えねェほどしか戦果を挙げてねェんだろ? ま、そういう事だよな」「――八十五」「アァ!? 盛ってんじゃねェぞ!」「凡骨に負ける訳ねェだろが」「「アァ!?」」
互いに額をぶつけ合ってメンチを切り合っていたが、先に引いたのは穿龍棍使いの少年だった。
「こんな事してる場合じゃねェんだ。良いか? 俺の邪魔はするな。凡骨はとっとと失せろ」
リスタを指差して牽制するだけすると、再び穿龍棍の噴射機構で跳び上がり、遠巻きに様子を窺っていた大型モンスターに襲い掛かり、次々と昏倒させていく。
「あッ、テメッ、話はまだ……クソが! 負けてられるかよあの生意気野郎に!!」
言いながら駆け出し、手近に居た大型モンスターに殴り掛かるリスタ。
二人の手によって、尋常ならざる速度で大型モンスターが討伐されていくのだが、それに気づけた者は、まだこの時は居なかった。
鳥竜種の群れは、やがて半分の、更に半分が息絶えようとしていた。
🌟後書
約2ヶ月振りの最新話更新です! 大変お待たせ致しましたーッ!(定型文)
ってもう2ヶ月って嘘でしょ…時間の感覚バグっちゃってるよ…😇
と言う訳でラオシャンロン討伐編も今回で4回目です。鳥竜種の群れと言うからには、やっぱり彼らも登場させねばと、様々なナンバリングの「先生」役を揃い踏みにしてみました!
が、まさかの噛ませ役にもならない扱い振りに、方々から非難の嵐が来そうなアレですw いや、言うて穿龍棍とか出したら鳥竜種なんて…(以下規制)
新たなハンターさんは穿龍棍の使い手の男の子です。いやぁー新たにモンハン二次創作小説を綴るなら絶対に出したかった子です。生意気盛りの男の子が穿龍棍なんて手を出したらこんなもんですよ! ワイルズで復活するの期待して待ってます!!!(血涙)
と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!
更新お疲れ様ですvv
返信削除大変ご無沙汰しております!
なんかすごいことになってきましたけれど、まだまだこれからなんだろうなぁw
そして穿龍棍!!なつかしいwレバーをがちゃがちゃしてれば勝てちゃうやつだ!!!
かっこいいモーションが多くて操作してて楽しかったですよね。そしてつえぇ(大事
ガンランスも忘れないであげてください…
さぁ!まだまだいくぜぇ!!
今回も楽しませていただきました!
次回も楽しみにしてますよーv
>とみちゃん
削除感想コメント有り難う御座います~!(´▽`*)
大変お待たせ致しました!!w
ですです!w まだまだこれからですよこれから! どんどん大変な事になっていきますので、まだここですら序盤です!w
レバーをガチャガチャしてれば勝てちゃう奴wwww(笑)
穿龍棍、モーションはカッコいいし飛び回れちゃうし強いしで、ほんとワイルズでも実装してくれたらなぁって今でも思っています…!ww
ガンランス!! これはガンランス使いの素敵なキャラクターを登場させねばですね!!(´▽`*)
どんどん行くぞー!! 次回更新こそ待たせずに参ります!!┗(^ω^)┛
今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
次回もぜひぜひお楽しみに~!!