2025年12月17日水曜日

第29話 変える力とお金の力〈5〉

呪を言祝ぐ冒険者(FF14二次創作小説)
第29話 変える力とお金の力〈5〉

第29話 変える力とお金の力〈5〉


「――――申し訳ありません。想定してたより反撃が無かった為、殺害してしまいました」
 半開きになった瞳の先で、サクラコさんが頭を下げている姿が見える。見えるし、何を言ってるかも理解できるのに、意識はどころか朧気で、指先一つ動かないし、呼吸も、きっと漏れていない。
 私はもしかして死んじゃったのかも知れない。そう思いながらも、意識だけは繋ぎ止められていて、サクラコさんとクルシドさんの会話が鼓膜から入って脳へと伝わっていく。
「うん、まぁ仕方ないね、うん。想定外の事案ゆえに、サクラコ君も腕に力が入ってしまったと言う事だろう。或いは……ささやかな意趣返し、と言ったところかな、うん?」
「そのような事は……」
「うん、うん。ワシもね、別に疑っている訳じゃあないんだ。ワシの呪印は今もしっかり君に根付いている事を確認しているし、お陰で従順に言う事を聞いてくれているからね」クルシドさんがサクラコさんの首筋をスッと撫でた。「凄腕の冒険者であろうと従僕に出来る呪印。ウウイ君にも付けてあげたかったんだがねぇ……?」
「申し訳ありません、その呪印の力が強過ぎるあまり、私も力の加減が難しく」
「うん、そういう事にしておこうか」
 クルシドさんはサクラコさんから離れ、改めてソファに身を投げ出し、若干苛立たしげに煙草を銜える。
「ともあれだ。そこの謎の冒険者は始末できた訳だしね、不確定要素はこれ以上増やすべきではないね、うん」と言って、耳元に触れて何かを操作した。「イドン君。根回しの進捗はどうだね? ……うん、うん。上出来だ。こちらは少しばかりトラブルが生じてね。何者かに勘付かれている可能性が浮上したんだよ。暁とやらの仕業ではないと思うが……如何せん何も聞き出せないまま殺してしまってね、どこまで計画が漏洩しているのかも杳として知れなくてね。……うん、うん。暁の本拠地の襲撃に合わせ、ワシ共も動き出すとしよう。エオルゼアを我らがガレマール帝国の属州にすべく……」
「…………」
 クルシドさんは耳元の装置――恐らくはリンクシェルから指を離すと、サクラコさんに視線を向け、鋭い眼差しで睨みつけた。
「サクラコ君、そこの屍を片付けてきたまえ。勿論、誰にも悟られる事の無いようにね、うん」
「承知致しました」
 サクラコさんは私に歩み寄ると、麻袋を被せて、荷物のように担ぎ上げた。
 真っ暗になった視界のせいか、急に意識が遠退き始め、私は何が何だか分からない内に再び意識を失った。
 ………………
 …………
 ……
 尻餅を突く感覚が全身に駆け抜け、私は思わず「いッ?!」と悲鳴を上げると、麻袋越しに口元を押さえつけられた。
 私は真っ暗闇の中で混乱したままカタカタ震えていると、耳元で小さな声が聞こえた。
「騒がないで。あなたは死んだの。もうウルダハには近づかないって約束が出来るのなら、このまま解放します」
「…………?!」
「あなたが何者なのか、私は知りませんし、興味も有りません。ただ、これ以上係わるのだけはやめて。今度こそ、本当に死んでしまう事になりかねないから」
 優しく言い聞かせる声は、まさしくサクラコさんの物だった。
 クルシドさんに言われて屍を捨てに来たと言う名目で、私を逃がしてくれる……そういう事なんだろうって、何と無く理解できたけれど、私は何か言い返したくてモゴモゴしてしまう。
「喋らないで。返答は要りません。黙って逃げるか、クルシドにバレて死ぬか、どちらかしかないんです。あなたは……賢くないかも知れませんけど、どうか選択を間違えないで」
 交わした言葉は少ないけれど、サクラコさんが悪い人ではないと言う事は、何と無く伝わっていた。
 伝わっていたからこそ、何とか彼女の力になりたいと言う気持ちで溢れて、私は咄嗟に麻袋越しに頭を横に振った。
 サクラコさんの、困った風な溜め息が聞こえてくる。
「……ついさっき殺されかけたのに。もしかして、自殺願望でも有るのですか?」
「…………!」声は出せなかったけど、頭を横にフルフルと振る。
「……何があなたをそこまで突き動かしているのか知りませんが、もしまだこの件に係わるつもりでいるのでしたら……」サクラコさんが言い淀む気配がした。「……そうですね。期待はしませんが、ベスパーベイに向かいなさい。そこで起きた事件を追えば、きっと……」
「…………?」
 ベスパーベイと言うと、西ザナラーンに有る港町だ。リムサ・ロミンサに行くフェリーが出ているあの場所に、何が有るんだろう?
 よく分からないままに、私は麻袋を被ったまま頭を縦にコクコクっと振った。サクラコさんはどこかおかしそうな笑声をポロッと零した後、麻袋を外してくれた。
 息苦しかった視界が開け、真夜中だと思われる野外で、私は月夜に照らされたミコッテ族の女性を見つめた。
「願わくは、もう二度と会わない事を祈ります。危険を冒してまで救った命を、無碍にして欲しくありませんから」サクラコさんは跪いていた姿勢から立ち上がると、月光に照らされた荒野の先を指差した。「行きなさい。そしてもうウルダハには戻ってこないで。あなたは死んだの。次にクルシドに見つかった時、あなただけじゃなく、あなたに係わる全ての人間が不幸になると思いなさい」
「…………サクラコさんは、どうするんですか?」
 これからの事を考えると心細い気持ちは有る。けれど、今はそれ以上に、サクラコさんの事が心配だった。
 危険を冒してまで私を救ってくれた事、それに関しては感謝してもしきれない。けれど、どうしてそこまでして私を救ってくれたのかも気になるし、何より……ずっと警告してくれていたのに、気づけなかった自分を叱りたい気分だった。
 サクラコさんは涼しげな表情のまま、微かに嘲りの籠もった微笑を落とすと、私に背を向けてゆっくりと歩き出した。
「どうもしないわ。今、私に出来る事を、全力で全うするだけよ」
 そう言い残すと、振り返りもせずに夜の影に消えて見えなくなってしまった。
 彼方からモンスターの遠吠えが聞こえる、月光だけが頼りの荒野に取り残された私は、泣きそうになりながらも、サクラコさんが示してくれた方角へ向けて歩き出した。
 ウルダハにはもう帰れない。何がどうしてそうなったのかも分からないまま、私の冒険は闇へと落ちていく。

🌠後書

 約2ヶ月振りの最新話更新です! 大変お待たせ致しましたーッ!(定期)
 もうやがて3ヶ月ぐらいFF14の世界から遠ざかっておりますけど、FF14はFF14で色々遭ったので今はあんまり触りたくない感じゆえに、課金せずにBlogで細々と二次創作小説だけ更新していく感じになりそうです…w いやまぁ身から出た錆と言われたらそうなんですけどね!ww(笑)
 と言う訳で大惨事になってしまいましたね。ウルダハを追われる事になった訳ですけど、その理由も意味もほぼ不明な感じで、よく分からないまま放逐…ウウイちゃんが何をしたって言うんだ!w
 そんな感じで、このサブタイトルのお話は一旦ここでお終いです。次回から新章と言いますか新エピソードが始まっていく予定ですが…綴れば綴るほど「ああしたいこうしたい」が溢れてきて、予定していた物語からだいぶ脱線気味ですけど、これほんとに飽きるまでに完結できるのかな私…笑
 と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!(´▽`*)

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    FF14もだいぶプレイされていないようでしたので、続きが拝読できるだけでも幸せでございます。ありがとう…ありがとう…

    ウウイちゃんベスパーベイにだけは行ってはいけない。あそこは悪の秘密結社「亜火津揆の潔迷」の本拠地で、「もしもし…聞こえる?ミンフィ〇アよ…」って聞こえてきたら終わりです。影武者のリットアティンさんに代わりをお願いしよう!

    今回も楽しませていただきました!
    次回も楽しみにしてますよーv

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    1. >とみちゃん
      感想コメント有り難う御座います~!(´▽`*)

      そうなんです、もう久しくPlayしてないのですけど、この物語自体は気に入ってるので、コツコツ更新していきたい所存です…! こちらこそいつもいの一番に感想コメントを送ってくれてめちゃ嬉しいです! いつもありが㌧💕

      「亜火津揆の潔迷」でゲラゲラ笑いましたよねwwwwwヤバ過ぎるwwwwwwww(笑) 影武者のリットアティンさんここに出張って来たらもう大惨事待ったなし!wwwwwww(笑)

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~!(´▽`*)

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