第10話 猫の尻尾と猫被り
第10話 猫の尻尾と猫被り
「――――フリーカンパニー設立には、フリーカンパニーのマスターを含め、計四人の立ち上げメンバーが必要、と」
黒渦団の軍令部で、ツバキはツトミを連れ立ってフリーカンパニーの説明を受けていた。 書類を受け取り、そこに四人分のサインを記す項目が有る事を確認すると、ツバキは一旦黒渦団の軍令部を離れてアフトカースルまで歩きながら難しい顔をする。「……前にも話したかも知れないけど、私、フレンドがあんまり居なくてね……」「サクちゃんとかどうなの~?」ツトミが不思議そうに小首を傾げる。「喜んで入ってくれそうな気がするよ~」「サクノさんは、もう別のフリーカンパニーに入ってるらしくてさ。そこで頼みの綱はツトミちゃんな訳だけれど……心当たりとか、有る?」「ん~~~」 ツトミが顎に指を添えて小首をこっくりこっくり傾げた後、「あ~、最近フレンドになった子に声を掛けてみるね~」とリンクシェルで連絡を取り始めた。 その様子を見ていたツバキは、何だかんだ交遊関係ではツトミに敵わないな、とうんうん頷いてしまうのだった。 暫くして、連絡を終えたツトミがツバキに向き直る。「丁度フリーカンパニーを探してたみたいで、すぐにでも来れるって~」ニパーッと微笑むツトミ。「二人で良かったんだよね?」「そうそう、あと二人分の署名が有ればフリーカンパニーを結成できるから」コクコクと頷くツバキ。「まさか本当に二人もフレンドを連れてこられるなんて、流石だねツトミちゃん」「ふふーん、もっと褒めるが良いぞ~」胸を張って得意気な表情を見せるツトミ。「でもね~、まだ冒険者に成り立ての子達だから、難しい事はさせないであげてね~、わたしも難しい事は出来ないけど~」「それは寧ろ願ったり叶ったりかな」ツバキは微苦笑を返した。「元々、若葉の冒険者さんや、カジュアルに活動する冒険者さんを募集する予定だったから。私も難しい事はさせるつもりは無いし、逆にそういう事を求められてもちょっと私の方が難しいかもだし」「なんだー、良かった♪」 そうこうしている間に、二人の冒険者が駆けて来る姿が視界に映り込んだ。 巴術士と思しきミコッテの女性と、槍術士と思しきララフェルの男性だ。「こんにちはー、貴女がツトミちゃんが話してたツバキさんかしら?」巴術士と思しきミコッテの女性が品定めするようにじろじろとツバキを見据える。「マスターって威厳はあんまり無さそうね……」「ちょちょ、流石に失礼だと思いますよレンさん……」槍術士と思しきララフェルの男性が思わずと言った様子で声を上げる。「あ、初めまして。僕はケータって言います。それで、こちらのミコッテさんが……」「レンよ。宜しく」軽く手を挙げて挨拶する巴術士と思しきミコッテの女性――レン。「見ての通り、まだ冒険者になって間もないんだけど、そんなあたし達でも加入できるのかしら? その、フリーカンパニーって」「レンさんに、ケータさんですね。こちらこそ宜しくお願いします」ペコリとお辞儀を見せた後、ツバキは黒渦団から貰った書類を確認する。「加入に関しては問題無い筈です。よっぽどのトラブルを起こさない限り、追放とかも無いと思って貰って大丈夫です」「よっぽどのトラブルって?」レンが怪訝な表情でツバキを見据える。「例えば?」「うーん……フリーカンパニーの所有物を泥棒したりするとか……かなぁ」難しい表情で腕を組むツバキ。「後は……そうですね、冒険者としての常識を逸脱する行為……一般人に危害を加えたり、故意に冒険者に怪我を負わせたりとか、そういう感じの事は、全般的に禁止と思って頂けたら……」「……なるほどね」レンが頷く。「まぁそうよね、基本的に悪い事をしたら追い出されると思っていれば良い訳ね。了解よ」「僕もレンさんもまだ冒険者に成り立てで、戦力にならないと思うのですけれど、それも大丈夫なんですか……?」 おずおずと手を挙げるケータに、ツバキはこっくり頷き返した。「冒険者としての活動を支援する為のフリーカンパニーと言う側面も有るので、私やツトミちゃんがケータさんのような冒険者のお手伝いが出来れば良いなぁと思っています。ただ、難度の高い依頼などは、まだ難しいかも知れませんが……」「そうなんですね、分かりました。どうも有り難う御座います」丁寧なお辞儀を返すケータ。「良かったねレンさん、僕達でも問題無さそうですよ」「お二人の方から特に質問が無いのでしたら、この書面にサインを頂けたら……」ススッと黒渦団から渡されたカンパニー結成書を見せるツバキ。「連帯保証人のサインじゃないから安心だよ~」ニコーッと笑いかけるツトミ。「一気に不安にさせるような事言わないでよ……」「あはは……」レンが表情を引き攣らせ、ケータが思わずと言った様子で苦笑を返す。 二人がサインを終えたのを確認したツバキは、二人に改めてお辞儀を返すと、「それじゃあ提出してきますね。フリーカンパニーの名前は……【Cat’s Tail】……“猫の尻尾”と言う名前で、略称は≪Cat’s≫で行きます」と告げ、パタパタと黒渦団の軍令部に駆けて行く。 初めてのフリーカンパニーの立ち上げはそうして幕を下ろし、若葉の冒険者二人……レンとケータを迎え入れて、新たな冒険が幕を開けるのだった。「てか、他人行儀過ぎるからもっと砕けてこ~、ツバキちゃんは猫被り過ぎだよ~」「なにおう? 第一印象大事でしょ?」「あら、猫被ってたの? ≪Cat’s≫だけに??」「あはは、それじゃあこれからはもう少し砕けて話しますね」「ケータ君は何も変わってないし~。レンちゃんはいつも通りだもんね」「無理に砕けなくても良いでしょ。話し易いスタイルで良いよ、私もそうするから」「あらそう。じゃあ改めて宜しくね、ツバキ」「了解です、ツバキさん。どうぞ宜しくです」 ……あっと言う間に打ち解けてしまい、冒険者に先輩も後輩も無いな、と思い至るツバキなのだった。
「――――フリーカンパニー設立には、フリーカンパニーのマスターを含め、計四人の立ち上げメンバーが必要、と」
黒渦団の軍令部で、ツバキはツトミを連れ立ってフリーカンパニーの説明を受けていた。
書類を受け取り、そこに四人分のサインを記す項目が有る事を確認すると、ツバキは一旦黒渦団の軍令部を離れてアフトカースルまで歩きながら難しい顔をする。
「……前にも話したかも知れないけど、私、フレンドがあんまり居なくてね……」
「サクちゃんとかどうなの~?」ツトミが不思議そうに小首を傾げる。「喜んで入ってくれそうな気がするよ~」
「サクノさんは、もう別のフリーカンパニーに入ってるらしくてさ。そこで頼みの綱はツトミちゃんな訳だけれど……心当たりとか、有る?」
「ん~~~」
ツトミが顎に指を添えて小首をこっくりこっくり傾げた後、「あ~、最近フレンドになった子に声を掛けてみるね~」とリンクシェルで連絡を取り始めた。
その様子を見ていたツバキは、何だかんだ交遊関係ではツトミに敵わないな、とうんうん頷いてしまうのだった。
暫くして、連絡を終えたツトミがツバキに向き直る。
「丁度フリーカンパニーを探してたみたいで、すぐにでも来れるって~」ニパーッと微笑むツトミ。「二人で良かったんだよね?」
「そうそう、あと二人分の署名が有ればフリーカンパニーを結成できるから」コクコクと頷くツバキ。「まさか本当に二人もフレンドを連れてこられるなんて、流石だねツトミちゃん」
「ふふーん、もっと褒めるが良いぞ~」胸を張って得意気な表情を見せるツトミ。「でもね~、まだ冒険者に成り立ての子達だから、難しい事はさせないであげてね~、わたしも難しい事は出来ないけど~」
「それは寧ろ願ったり叶ったりかな」ツバキは微苦笑を返した。「元々、若葉の冒険者さんや、カジュアルに活動する冒険者さんを募集する予定だったから。私も難しい事はさせるつもりは無いし、逆にそういう事を求められてもちょっと私の方が難しいかもだし」
「なんだー、良かった♪」
そうこうしている間に、二人の冒険者が駆けて来る姿が視界に映り込んだ。
巴術士と思しきミコッテの女性と、槍術士と思しきララフェルの男性だ。
「こんにちはー、貴女がツトミちゃんが話してたツバキさんかしら?」巴術士と思しきミコッテの女性が品定めするようにじろじろとツバキを見据える。「マスターって威厳はあんまり無さそうね……」
「ちょちょ、流石に失礼だと思いますよレンさん……」槍術士と思しきララフェルの男性が思わずと言った様子で声を上げる。「あ、初めまして。僕はケータって言います。それで、こちらのミコッテさんが……」
「レンよ。宜しく」軽く手を挙げて挨拶する巴術士と思しきミコッテの女性――レン。「見ての通り、まだ冒険者になって間もないんだけど、そんなあたし達でも加入できるのかしら? その、フリーカンパニーって」
「レンさんに、ケータさんですね。こちらこそ宜しくお願いします」ペコリとお辞儀を見せた後、ツバキは黒渦団から貰った書類を確認する。「加入に関しては問題無い筈です。よっぽどのトラブルを起こさない限り、追放とかも無いと思って貰って大丈夫です」
「よっぽどのトラブルって?」レンが怪訝な表情でツバキを見据える。「例えば?」
「うーん……フリーカンパニーの所有物を泥棒したりするとか……かなぁ」難しい表情で腕を組むツバキ。「後は……そうですね、冒険者としての常識を逸脱する行為……一般人に危害を加えたり、故意に冒険者に怪我を負わせたりとか、そういう感じの事は、全般的に禁止と思って頂けたら……」
「……なるほどね」レンが頷く。「まぁそうよね、基本的に悪い事をしたら追い出されると思っていれば良い訳ね。了解よ」
「僕もレンさんもまだ冒険者に成り立てで、戦力にならないと思うのですけれど、それも大丈夫なんですか……?」
おずおずと手を挙げるケータに、ツバキはこっくり頷き返した。
「冒険者としての活動を支援する為のフリーカンパニーと言う側面も有るので、私やツトミちゃんがケータさんのような冒険者のお手伝いが出来れば良いなぁと思っています。ただ、難度の高い依頼などは、まだ難しいかも知れませんが……」
「そうなんですね、分かりました。どうも有り難う御座います」丁寧なお辞儀を返すケータ。「良かったねレンさん、僕達でも問題無さそうですよ」
「お二人の方から特に質問が無いのでしたら、この書面にサインを頂けたら……」ススッと黒渦団から渡されたカンパニー結成書を見せるツバキ。
「連帯保証人のサインじゃないから安心だよ~」ニコーッと笑いかけるツトミ。
「一気に不安にさせるような事言わないでよ……」「あはは……」レンが表情を引き攣らせ、ケータが思わずと言った様子で苦笑を返す。
二人がサインを終えたのを確認したツバキは、二人に改めてお辞儀を返すと、「それじゃあ提出してきますね。フリーカンパニーの名前は……【Cat’s Tail】……“猫の尻尾”と言う名前で、略称は≪Cat’s≫で行きます」と告げ、パタパタと黒渦団の軍令部に駆けて行く。
初めてのフリーカンパニーの立ち上げはそうして幕を下ろし、若葉の冒険者二人……レンとケータを迎え入れて、新たな冒険が幕を開けるのだった。
「てか、他人行儀過ぎるからもっと砕けてこ~、ツバキちゃんは猫被り過ぎだよ~」
「なにおう? 第一印象大事でしょ?」
「あら、猫被ってたの? ≪Cat’s≫だけに??」
「あはは、それじゃあこれからはもう少し砕けて話しますね」
「ケータ君は何も変わってないし~。レンちゃんはいつも通りだもんね」
「無理に砕けなくても良いでしょ。話し易いスタイルで良いよ、私もそうするから」
「あらそう。じゃあ改めて宜しくね、ツバキ」
「了解です、ツバキさん。どうぞ宜しくです」
……あっと言う間に打ち解けてしまい、冒険者に先輩も後輩も無いな、と思い至るツバキなのだった。
🌟後書
今回のお話は、ツトミちゃんにサブキャラを2人も用意して頂いた時の事を、物語仕立てにしたお話になります。 レンちゃんとケータ君と言う風に描写しておりますが、フルネームは「ヤトウ レン」に「リクドウ ケータ」…即ち「夜藤レン」「六道恵太」と、私の執筆していた物語のキャラクターをそのまま名付けてくれたみたいで、当時はケータ君だけ気づいたものの、レンちゃんは全然気づかない失態をやらかしてしまいwww いやぁー自分で名付けた名前と言うのも有って、「ヤトウ レンちゃんかぁ…めちゃ良い名前だな…」なんて思ってまして、後から教えられた時は思わず噴き出してゲラゲラ笑い転げてましたともwwwあの作品のあの子か!wwwwってwww FCの為に作成して頂いたからには、ちゃんと物語にも反映させなければと思い、この若葉のお二人のキャラ付けに関しては、原作のキャラクターが異世界転生してエオルゼアに来たと言う態で執筆しております。それが一番しっくりくるかなーなんてw と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!
🌸以下感想
とみ
更新お疲れ様ですvv
そういうキャラ付けだったからか、ふたりとも馴染みやすい感じです。
レンちゃんに関しては、「オイオイwまじかよww」って思いましたが、
あれだけ色々なキャラクターを創作されていてはすぐには出てこないキャラがいてもおかしくないですよねw
男性の方を咲原ミコトにしておけばよかったのか?w
いよいよ動き出すフリーカンパニー!世界征服はもう目の前だっっ!!!
今回も楽しませていただきました~v
次回も楽しみにしてますよーv
2024年1月26日金曜日 21:52:01 JST
夜影
>とみちゃん
感想コメント有り難う御座います~!(´▽`*)
馴染みやすい感じに仕上がってて良かったです~!!┗(^ω^)┛
確かにwwww男性の方を咲原ミコト君にしていればもう少し気づけたかも…??w
たくさんキャラクターを創作しているのは仰る通りなのですが、流石に全く気付かなかったのはお恥ずかしい限りでwwwずぅーっと「良い名前だなぁ…」って思ってるだけでまさか自分が名付けた名前だとは露にも思わずwwwww(笑)
世界征服目指しちゃうフリーカンパニー!wwwww 今後とも目が離せませんね!wwww(笑)
今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
次回もぜひぜひお楽しみに~!!
2024年1月27日土曜日 8:05:15 JST
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