第9話 円満の脱退、次への笑顔
第9話 円満の脱退、次への笑顔
「あっ、ツバキちゃーん! こっちこっちー!」
ミスト・ヴィレッジにあるフリーカンパニーのハウスにやって来たツバキは、門を潜ってすぐの前庭で待機していたフリーカンパニーのマスター、レナに迎え入れられた。 事前に話こそ通してあるものの、ツバキは若干緊張した様子で彼女を見据え、一瞬口籠もってから、言葉にした。「急な話ですけれど、フリーカンパニーを抜ける事にしまして……」「うんうん、フレンドさんとフリーカンパニーを立ち上げるって聞いたよ? 凄いじゃん!」 レナは快活な笑顔で頷くと、浮かない表情のツバキを不思議そうに見つめる。「どしたの? めでたい事じゃない感じ?」「いやぁー……急な話でしたし、お給料も頂いていた身としては、こう……心苦しいと言いますか……」「なぁーんだ、そんな事!」けらけら笑うレナは、ツバキの肩をバシバシ叩き始めた。「フリーカンパニーのマスターしてるとさ、出会いも別れも、数えきれないぐらい繰り返してきたし、今回はフレンドさんと一緒にフリーカンパニーを立ち上げるって門出なんだからさ、笑顔で送り出さなきゃでしょ! それにツバキちゃんは、ちゃんとそういう挨拶をして行ける真面目な子だって知ってるしね!」「あうぅ……」 嬉しいやら気恥ずかしいやらで俯いてしまうツバキに、レナは更に笑いかける。「そう、色んな人が居るからね。とんでもない悪行を働いて、永久追放になったメンバーも、居ない訳じゃなかったし」うんうんと頷いて、レナは笑った。「それに、これで今生の別れって訳じゃないでしょ? またいつでも遊びに来なよ! 何ならフリーカンパニー同士で共同イベントをしたりとかさ!」「あ、それ良いですね」ハッと顔を上げるツバキ。「ぜひ、そういう付き合いも続けていきたいって思ってました」「うんうん、だったら問題無いじゃん! 何も心配する事無いよ~。メンバーにも挨拶を済ませたんでしょ?」「えと、トームストーンでロードストーンの方に書き記しておいたので、たぶん大丈夫だと思います」「だったら後は笑顔で送り出すだけだね!」 終始ニコニコのレナだったが、一瞬だけ神妙な表情を浮かべた。「勿論さ、ツバキちゃんが出て行く事自体は寂しいよ? いつも会話の輪に混ざってくれて、潤滑油みたいになってくれてたし。でもさ、最後までツバキちゃんがしっかり挨拶して出て行くってのに、マスターがしょんぼりしてたらダメじゃん? そういう事だから! 別にツバキちゃんが出て行くの嬉しい~! って喜んでる訳じゃないんだからね!」「あはは、そう言ってくれるとやっぱり嬉しいですね、あははは」 そう、フリーカンパニーを離れると言っても、それで縁が切れる訳ではない。またいつでも遊びに来てと言って貰えてるし、一緒に冒険に出掛ける事も有るだろう。「あ、間に合ったかな?」 カンパニーハウスの門を潜って出て行こうと思った矢先に、テレポで現れたのは同じフリーカンパニーのメンバーであるモコだった。「もしかして入れ違い?」「あ、いや、今から抜ける手続きをしてこようかなって所でした」モコに向き直り、ツバキは改めてお辞儀をする。「今丁度レナさんとの話が終わった所でして」「そかそか。お嬢も言ってたと思うけど、また一緒に遊んでね? 中々タイミングが合わなくて、一緒に冒険とかも出来なかったからさ……」寂しそうに呟くモコ。「ほら、水着で撮影会とかもさ、約束してたじゃん?」「勿論忘れてませんよ、一式が揃った時は是非に!」嬉しそうに微笑むツバキ。「あ、その時は装備を手に入れる為にお手伝いもしてくれるんでしたっけ?」「もち! その為なら人肌脱いじゃうよ!」グッと力こぶを作って快活に笑うモコ。「ま、それも新しいフリーカンパニーのあれこれが落ち着いた後だとは思うけどね。頑張りなよ~、新しいフリーカンパニーではつばにゃんがマスターなんでしょ?」「ですです。これから忙しくなりそうで……」 二人して笑い合っていると、レナが複雑そうな表情で歩み寄って来た。「ちょっとー!? 折角良い感じに送り出したのに、いつまで仲良くお喋りしてんのー?! だったらあたしも混ぜなさいよあたしも!」「あははは! 済みません、つい!」「お嬢の怒りが爆発しちゃうね、あはは!」 三人して笑い合った後、ツバキは満足した顔で大きく頷き、二人に頭を下げた。「短い間でしたが、今まで本当にお世話になりました! また遊びに来ます!」「うんうん、またいつでも来い!」「たぶん暇してると思うから、いつでも遊びに来なよ~」 レナとモコが微笑みながら手を振り、それを確認したツバキは、そこでテレポを使ってカンパニーハウスを後にした。 短い間……半年も在籍しなかったフリーカンパニーであれど、色々勉強になる事が多い期間だったと、ツバキは感じていた。 これを糧に、ツトミと一緒にフリーカンパニーを立ち上げる……その一歩を、今日踏み出したのだ。「さて、これから忙しくなるなぁ。頑張ろっ」 見送ってくれた二人の笑顔を胸に秘めながら、ツバキはツトミが待つであろうリムサ・ロミンサの一角を目指して走り出す。 これから待つ幾多のトラブルを、この時はまだ何も知らずに――――
「あっ、ツバキちゃーん! こっちこっちー!」
ミスト・ヴィレッジにあるフリーカンパニーのハウスにやって来たツバキは、門を潜ってすぐの前庭で待機していたフリーカンパニーのマスター、レナに迎え入れられた。
事前に話こそ通してあるものの、ツバキは若干緊張した様子で彼女を見据え、一瞬口籠もってから、言葉にした。
「急な話ですけれど、フリーカンパニーを抜ける事にしまして……」
「うんうん、フレンドさんとフリーカンパニーを立ち上げるって聞いたよ? 凄いじゃん!」
レナは快活な笑顔で頷くと、浮かない表情のツバキを不思議そうに見つめる。
「どしたの? めでたい事じゃない感じ?」
「いやぁー……急な話でしたし、お給料も頂いていた身としては、こう……心苦しいと言いますか……」
「なぁーんだ、そんな事!」けらけら笑うレナは、ツバキの肩をバシバシ叩き始めた。「フリーカンパニーのマスターしてるとさ、出会いも別れも、数えきれないぐらい繰り返してきたし、今回はフレンドさんと一緒にフリーカンパニーを立ち上げるって門出なんだからさ、笑顔で送り出さなきゃでしょ! それにツバキちゃんは、ちゃんとそういう挨拶をして行ける真面目な子だって知ってるしね!」
「あうぅ……」
嬉しいやら気恥ずかしいやらで俯いてしまうツバキに、レナは更に笑いかける。
「そう、色んな人が居るからね。とんでもない悪行を働いて、永久追放になったメンバーも、居ない訳じゃなかったし」うんうんと頷いて、レナは笑った。「それに、これで今生の別れって訳じゃないでしょ? またいつでも遊びに来なよ! 何ならフリーカンパニー同士で共同イベントをしたりとかさ!」
「あ、それ良いですね」ハッと顔を上げるツバキ。「ぜひ、そういう付き合いも続けていきたいって思ってました」
「うんうん、だったら問題無いじゃん! 何も心配する事無いよ~。メンバーにも挨拶を済ませたんでしょ?」
「えと、トームストーンでロードストーンの方に書き記しておいたので、たぶん大丈夫だと思います」
「だったら後は笑顔で送り出すだけだね!」
終始ニコニコのレナだったが、一瞬だけ神妙な表情を浮かべた。
「勿論さ、ツバキちゃんが出て行く事自体は寂しいよ? いつも会話の輪に混ざってくれて、潤滑油みたいになってくれてたし。でもさ、最後までツバキちゃんがしっかり挨拶して出て行くってのに、マスターがしょんぼりしてたらダメじゃん? そういう事だから! 別にツバキちゃんが出て行くの嬉しい~! って喜んでる訳じゃないんだからね!」
「あはは、そう言ってくれるとやっぱり嬉しいですね、あははは」
そう、フリーカンパニーを離れると言っても、それで縁が切れる訳ではない。またいつでも遊びに来てと言って貰えてるし、一緒に冒険に出掛ける事も有るだろう。
「あ、間に合ったかな?」
カンパニーハウスの門を潜って出て行こうと思った矢先に、テレポで現れたのは同じフリーカンパニーのメンバーであるモコだった。
「もしかして入れ違い?」
「あ、いや、今から抜ける手続きをしてこようかなって所でした」モコに向き直り、ツバキは改めてお辞儀をする。「今丁度レナさんとの話が終わった所でして」
「そかそか。お嬢も言ってたと思うけど、また一緒に遊んでね? 中々タイミングが合わなくて、一緒に冒険とかも出来なかったからさ……」寂しそうに呟くモコ。「ほら、水着で撮影会とかもさ、約束してたじゃん?」
「勿論忘れてませんよ、一式が揃った時は是非に!」嬉しそうに微笑むツバキ。「あ、その時は装備を手に入れる為にお手伝いもしてくれるんでしたっけ?」
「もち! その為なら人肌脱いじゃうよ!」グッと力こぶを作って快活に笑うモコ。「ま、それも新しいフリーカンパニーのあれこれが落ち着いた後だとは思うけどね。頑張りなよ~、新しいフリーカンパニーではつばにゃんがマスターなんでしょ?」
「ですです。これから忙しくなりそうで……」
二人して笑い合っていると、レナが複雑そうな表情で歩み寄って来た。
「ちょっとー!? 折角良い感じに送り出したのに、いつまで仲良くお喋りしてんのー?! だったらあたしも混ぜなさいよあたしも!」
「あははは! 済みません、つい!」「お嬢の怒りが爆発しちゃうね、あはは!」
三人して笑い合った後、ツバキは満足した顔で大きく頷き、二人に頭を下げた。
「短い間でしたが、今まで本当にお世話になりました! また遊びに来ます!」
「うんうん、またいつでも来い!」「たぶん暇してると思うから、いつでも遊びに来なよ~」
レナとモコが微笑みながら手を振り、それを確認したツバキは、そこでテレポを使ってカンパニーハウスを後にした。
短い間……半年も在籍しなかったフリーカンパニーであれど、色々勉強になる事が多い期間だったと、ツバキは感じていた。
これを糧に、ツトミと一緒にフリーカンパニーを立ち上げる……その一歩を、今日踏み出したのだ。
「さて、これから忙しくなるなぁ。頑張ろっ」
見送ってくれた二人の笑顔を胸に秘めながら、ツバキはツトミが待つであろうリムサ・ロミンサの一角を目指して走り出す。
これから待つ幾多のトラブルを、この時はまだ何も知らずに――――
🌟後書
ツバキちゃんとして転生してからお世話になっていたFCを抜けてきたお話でした。 本当に良くして貰いましたし、初めてお給料が出るFCに所属したと言うのも相俟って、感慨深いお別れとなりました…言うてサブキャラのトトギちゃんが今は所属してるので、交流は今も続いている訳ですがw 友情出演としてFCマスターのレナさん、そしてメンバーのモコさんに登場して頂きましたが、お二人とも出演を快諾してくれて助かりました…!(´▽`*) この場を借りて改めて感謝をば! そんな訳で新たな一歩を踏み出したツバキちゃん。FCを脱退するのもそうですが、新しいFCを立ち上げると言うのも感慨深いものですw これで前世と前々世を含めて三度目になる筈ですので、今度こそはー!w って感じですねw と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!
🌸以下感想
とみ
(๑•̀ㅂ•́)و✧
2024年1月25日木曜日 20:42:58 JST
夜影
>とみちゃん
( ´∀`)bグッ!
2024年1月26日金曜日 8:06:18 JST
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