第11話 いつもの猫、鳴いてる猫
第11話 いつもの猫、鳴いてる猫
「――ところでツバキちゃん。ツバキちゃんはこのフリーカンパニーで何をしたい感じなのー?」
いつものたまり場であるリムサ・ロミンサの下甲板層の国際街広場の一角で、ツトミが疑問符を頭に載せて呟いたのが、ツバキの耳に届く。 フリーカンパニーは設立した。メンバーも最低限所属している。後は何を活動の指針にするか。尤も、それこそが一番大事な要素と言えよう。 ツバキはマーケットボードの隣の壁に凭れ掛かったまま、ツトミを見据えて小さく首肯を返す。「以前までのツトミちゃんみたいなさ、冒険者に成り立ての冒険者……いわゆる若葉の冒険者のお手伝いをしたいなって思ったのが、大きいかな。後は……」こほん、と咳払いをするツバキ。「何て言うかこう……言い方は悪いかも知れないけど、良からぬフリーカンパニーにツトミちゃんが捕まらないか心配だったから、先んじてフリーカンパニーを立ち上げたかったのは有るかな……」「えー? ツトミ、そんな詐欺師に捕まりませーん」ぶぶーっと両腕をバッテンに交差してしかめっ面をするツトミ。「現れる人全員詐欺師みたいな世界知ってるから、ツトミは騙されませーん」「ヤバ過ぎる世界を知ってるの逆に怖いんだけど……」苦笑を返すツバキ。「だからまぁ、ツトミちゃんみたいに悪い人だと分かってついて行かないような冒険者は別として、路頭に迷ってる冒険者も居ると思うんだよ。これからどうしたら良いんだ~、とか。冒険者になったけど先行き不安~、とか」「おギルが心許無いから貸して~、とか?」「それは私が詐欺に遭ってるパターンだね……」「だよね」 二人してけらけら笑い合った後、ツバキが改めて咳払いする。「まぁそういう訳で、若葉な冒険者の受け皿として機能すれば良いな~って思ってる感じかな。そういう冒険者の雛チョコボを導いてくれそうな冒険者も一緒に募集はしたいと思ってるけど」「なるほどぉー。ツバキちゃん、先生みたいになるって事かぁ~」ふんふん、と頷くツトミ。「はい、ツバキ先生! 次は何を奢ってくれますか!」「先生にたからないでくださーい」「先生けちんぼだね、ツトミがっかり~」「問題児しか居ないのかこのフリーカンパニーはっ」 再びけらけら笑い合う二人。ツバキが懸命に咳払いをする。「おほんおほん。……因みに、ツトミちゃんが誘ってくれた二人の冒険者だけど、纏ってる装備を見た限り、私がツトミちゃんと初めて会った時と同じぐらいの練度の冒険者って感じだったね」「そうそう~、さっき冒険者になったって言ってたよ~」「さっき……」 ツバキは苦笑を返した後、数瞬悩んだ表情を見せたが、やがて小さく頷くと、改めてツトミに視線を戻した。「二人が今後も冒険者を続けていけそうならサポートするし、冒険者が合わないなって当人が思ったら、他の道も示していければ良いな。冒険者として生きるとしても、冒険って大きな意味で捉えたら戦闘に特化してもしなくても良い訳だし、クラフターやギャザラーとしての道も有る訳だもんね」「後はお給料だね!」「お給料かぁ……」「シャチョー様、今日もカッコイイネ! お給料期待シテルヨ!」「流石に調子が良過ぎないかい……?」 けらけら笑い合った後、ツバキは喉の調子が悪そうに空咳を挟んだ。「お給料についてはまた後日考えるとして……後はカンパニーハウスとかも用意したいんだよね」 フリーカンパニーが所有する冒険者居住区に建造できる居住地をカンパニーハウスと言い、冒険者一人一人が所有できる個人宅とはまた別で、そのフリーカンパニー毎のたまり場ないし、集会所みたいな場所としても運用できる代物。 ツバキ自身はアパルトメントを一室買い取って生活しているが、ツトミやレン、ケータ達は宿屋で生活を余儀無くされている。 無論、冒険者とはそもそも根無し草みたいなもので、一ヶ所に居留して活動する方が稀と言う側面も有るので、冒険者居住区に自分だけの一軒家を所有する事は即ち、その土地に縛られるみたいな意味合いにも取られがちだ。 善し悪しこそあれど、宿屋で毎晩宿代を支払うぐらいなら、居住区の個室で寝泊まりするのも、冒険者として一つのステータスにもなるし、ギルを節約する事にもなるだろう。「カンパニーハウスの用意って、何が必要なのー?」小首を傾げるツトミ。「強奪?」「冒険者とは思えない蛮族みたいな解決方法だよツトミちゃん……」思わずラールガーみたいな顔になるツバキ。「おギルがたっぷり要るね。一番小さなお家でも……ざっと三百万ギルぐらい?」「……」ツトミが小首を傾げたまま暫く固まっていたが、やがて傾げていた首を戻すと、ツバキを正面から見据えた。「カンパニーハウスを諦めてさ、ご飯食べに行こ?」「いやいや諦めないけども」思わず手を振って否定するツバキ。「でもまぁ確かにお腹空いたし、そろそろご飯にしよっか」「うんうん、それが良いよ~。ツトミ、三百万ギル分ご飯食べるから期待してて!」「シンプルに困る上に、あくまで私からたかる気なんだねツトミちゃん?」と、ツバキがツッコミを入れてる間にもツトミの足はレストラン・ビスマルクに向いていて、「ツトミちゃーん?!」と思わず慌てて駆け出してしまうのだった。 そんな感じで、結局今日も話し合いは終わらず、寧ろ話し合いを楽しむだけ楽しんで、結論が出ないままご飯を堪能して、一日が終わるのだった。 その後、ツバキはフリーカンパニーを紹介する一文にこう付け加えたとか、付け加えなかったとか。「――――お喋りだけして冒険に出ない冒険者も募集しています」 ……フリーカンパニー【猫の尻尾】は、今日もリムサ・ロミンサの風に吹かれて長閑な鳴き声を鳴らしているのだった。
「――ところでツバキちゃん。ツバキちゃんはこのフリーカンパニーで何をしたい感じなのー?」
いつものたまり場であるリムサ・ロミンサの下甲板層の国際街広場の一角で、ツトミが疑問符を頭に載せて呟いたのが、ツバキの耳に届く。
フリーカンパニーは設立した。メンバーも最低限所属している。後は何を活動の指針にするか。尤も、それこそが一番大事な要素と言えよう。
ツバキはマーケットボードの隣の壁に凭れ掛かったまま、ツトミを見据えて小さく首肯を返す。
「以前までのツトミちゃんみたいなさ、冒険者に成り立ての冒険者……いわゆる若葉の冒険者のお手伝いをしたいなって思ったのが、大きいかな。後は……」こほん、と咳払いをするツバキ。「何て言うかこう……言い方は悪いかも知れないけど、良からぬフリーカンパニーにツトミちゃんが捕まらないか心配だったから、先んじてフリーカンパニーを立ち上げたかったのは有るかな……」
「えー? ツトミ、そんな詐欺師に捕まりませーん」ぶぶーっと両腕をバッテンに交差してしかめっ面をするツトミ。「現れる人全員詐欺師みたいな世界知ってるから、ツトミは騙されませーん」
「ヤバ過ぎる世界を知ってるの逆に怖いんだけど……」苦笑を返すツバキ。「だからまぁ、ツトミちゃんみたいに悪い人だと分かってついて行かないような冒険者は別として、路頭に迷ってる冒険者も居ると思うんだよ。これからどうしたら良いんだ~、とか。冒険者になったけど先行き不安~、とか」
「おギルが心許無いから貸して~、とか?」「それは私が詐欺に遭ってるパターンだね……」「だよね」
二人してけらけら笑い合った後、ツバキが改めて咳払いする。
「まぁそういう訳で、若葉な冒険者の受け皿として機能すれば良いな~って思ってる感じかな。そういう冒険者の雛チョコボを導いてくれそうな冒険者も一緒に募集はしたいと思ってるけど」
「なるほどぉー。ツバキちゃん、先生みたいになるって事かぁ~」ふんふん、と頷くツトミ。「はい、ツバキ先生! 次は何を奢ってくれますか!」
「先生にたからないでくださーい」「先生けちんぼだね、ツトミがっかり~」「問題児しか居ないのかこのフリーカンパニーはっ」
再びけらけら笑い合う二人。ツバキが懸命に咳払いをする。
「おほんおほん。……因みに、ツトミちゃんが誘ってくれた二人の冒険者だけど、纏ってる装備を見た限り、私がツトミちゃんと初めて会った時と同じぐらいの練度の冒険者って感じだったね」「そうそう~、さっき冒険者になったって言ってたよ~」「さっき……」
ツバキは苦笑を返した後、数瞬悩んだ表情を見せたが、やがて小さく頷くと、改めてツトミに視線を戻した。
「二人が今後も冒険者を続けていけそうならサポートするし、冒険者が合わないなって当人が思ったら、他の道も示していければ良いな。冒険者として生きるとしても、冒険って大きな意味で捉えたら戦闘に特化してもしなくても良い訳だし、クラフターやギャザラーとしての道も有る訳だもんね」
「後はお給料だね!」「お給料かぁ……」「シャチョー様、今日もカッコイイネ! お給料期待シテルヨ!」「流石に調子が良過ぎないかい……?」
けらけら笑い合った後、ツバキは喉の調子が悪そうに空咳を挟んだ。
「お給料についてはまた後日考えるとして……後はカンパニーハウスとかも用意したいんだよね」
フリーカンパニーが所有する冒険者居住区に建造できる居住地をカンパニーハウスと言い、冒険者一人一人が所有できる個人宅とはまた別で、そのフリーカンパニー毎のたまり場ないし、集会所みたいな場所としても運用できる代物。
ツバキ自身はアパルトメントを一室買い取って生活しているが、ツトミやレン、ケータ達は宿屋で生活を余儀無くされている。
無論、冒険者とはそもそも根無し草みたいなもので、一ヶ所に居留して活動する方が稀と言う側面も有るので、冒険者居住区に自分だけの一軒家を所有する事は即ち、その土地に縛られるみたいな意味合いにも取られがちだ。
善し悪しこそあれど、宿屋で毎晩宿代を支払うぐらいなら、居住区の個室で寝泊まりするのも、冒険者として一つのステータスにもなるし、ギルを節約する事にもなるだろう。
「カンパニーハウスの用意って、何が必要なのー?」小首を傾げるツトミ。「強奪?」
「冒険者とは思えない蛮族みたいな解決方法だよツトミちゃん……」思わずラールガーみたいな顔になるツバキ。「おギルがたっぷり要るね。一番小さなお家でも……ざっと三百万ギルぐらい?」
「……」ツトミが小首を傾げたまま暫く固まっていたが、やがて傾げていた首を戻すと、ツバキを正面から見据えた。「カンパニーハウスを諦めてさ、ご飯食べに行こ?」
「いやいや諦めないけども」思わず手を振って否定するツバキ。「でもまぁ確かにお腹空いたし、そろそろご飯にしよっか」
「うんうん、それが良いよ~。ツトミ、三百万ギル分ご飯食べるから期待してて!」
「シンプルに困る上に、あくまで私からたかる気なんだねツトミちゃん?」と、ツバキがツッコミを入れてる間にもツトミの足はレストラン・ビスマルクに向いていて、「ツトミちゃーん?!」と思わず慌てて駆け出してしまうのだった。
そんな感じで、結局今日も話し合いは終わらず、寧ろ話し合いを楽しむだけ楽しんで、結論が出ないままご飯を堪能して、一日が終わるのだった。
その後、ツバキはフリーカンパニーを紹介する一文にこう付け加えたとか、付け加えなかったとか。
「――――お喋りだけして冒険に出ない冒険者も募集しています」
……フリーカンパニー【猫の尻尾】は、今日もリムサ・ロミンサの風に吹かれて長閑な鳴き声を鳴らしているのだった。
🌟後書
そう言えば再投稿し忘れてたと思い出したので慌てて再投稿する奴!w 次話からは書き下ろしの新作になりますので、どうぞお楽しみに! 今回はフリーカンパニーをどういう方針で運営していこうか~みたいな話し合いの回でした。 大体こんな感じでダラダラ駄弁っている内に夜が更けて、今日はこの辺にしよっか~と寝ちゃうのが、ツバキちゃんとツトミちゃんの日常です(笑)。活動して活動!www(笑) そんな日常のワンシーンを切り取って物語に仕立てたのですが、すっかり必殺仕事人感が抜け落ちて、ほのぼのまったり冒険者感が強い感じになってしまいましたね…w あの頃のSATSUBATU感が恋しい…!ww(笑) と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!
🌸以下感想
とみ
更新お疲れ様ですvv
ただ、ただダラダラおしゃべりしてるだけではなくってよ!!
わたしのメインジョブである話術士のスキルを磨いているのです。
今日はこの辺にしよっか~なんて言ってるヒマがあったら、話術士のジョブクエ全部終わらせてきやがれ!話はそれからだ!!!
すみませぬ、少々興奮してしまったようです。
ただね、月夜ばかりと思うなよ…(SATSUBATU
うまくまとまったところでお暇しまーすv
今回も楽しませていただきました~!
次回も楽しみにしてますよーv
2024年2月3日土曜日 1:11:51 JST
夜影
>とみちゃん
感想コメント有り難う御座います~!(´▽`*)
何ぃーっ!!?!?! 流石話術士ギルドのギルドマスター…! そんなスキル回しがあっただなんて…!wwww(笑)
話術士のジョブクエ全部終わらせてきやがれwwwwwあまりにも強過ぎるwwwww(笑)
SATSUBATSUってそういうwwwwww(笑) 今宵も虎徹が血に飢えておるわ…的な!?!?!wwwww(笑)
今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
次回もぜひぜひお楽しみに~!!
2024年2月3日土曜日 8:21:04 JST
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