第27話 言動と行動と思考回路以外はマトモだから
第27話 言動と行動と思考回路以外はマトモだから
「こんにちワ~どなたかいらっしゃいませんカ~?」
ラヴファイヤー君が仕事に出掛けて、砂月ちゃんが高校に登校した後の、十時頃。トイレを出てトコトコ自室に戻ろうとしたところで、玄関から中性的な声が聞こえてきた。
お客さんかな? と思ってトコトコ玄関に向かい、戸を開けると、そこにはピエロの仮面を被った大柄な人が立っていた。
「うわ、どちら様だろう」第一声は驚きのアレだったんだけど、失礼過ぎたかな。
「ドーモ、ワタクシ、こういう者でしてぇ~」
ピエロの仮面を被ったスーツ姿の男性……いや女性……どっちか分からない人は、名刺を差し出してきた。
受け取って見ると、「何でも屋 浦桐女媧《ウラキリ ジョカ》」とだけ記されていた。
「浦桐さん?」全然知らない人だ。「神否荘の住人の知り合いかな……」
「エェ、マァー、ワタクシの事は、軽薄にジョーカーさんとお呼びくだされば、エェ、ハイ」ピエロの面のせいで怪しさ満点だし、口調がどうにも怪し過ぎて何も頭に入ってこないぞ。「今回はデスネ、ハイ。神否荘の皆様を地獄へ……旅行の招待をデスネ、ハイ。ご招待しようと思いまして、エェ」何も頭に入ってこない。
「えぇーっと、旅行に連れてってくれるんですか?」地獄とか口走ってたけど。「地獄に?」
「イヤァー、その、エェーット、違うんデスヨ、エェ、ハイ。旅行にぃ~、そう、旅行、行ってみませんカ? 神否荘の皆様総出で、地獄に……旅行に、エェ、ハイ」こんなあからさまに怪しい人初めてかも知れない。
「ちょっと俺一人の判断じゃアレなんで、皆さんに相談してきますね」と言って玄関から戻ろうとしたら、丁度通りかかったシンさんを見つけた。「あ、シンさーん」
「んあ?」煙草を引っかけて眠たそうな表情で振り返ったシンさんは、ボサボサの金髪を掻き混ぜながら、ペタペタと素足を鳴らしてやって来た。「どしたの? ってアレ、ジョーカーじゃん。誰か殺しに来たの?」
「え、シンさんの知り合いですか?」思わずと言った感じで声を掛けてしまう。「と言う事は殺し屋さん?」
「ワァー、シンサン、お久し振りデスゥ~」浦桐さん……じゃなかった、ジョーカーさんがペコペコと頭を下げてる。「その節はドォーモ。今ワタクシ、殺し屋は廃業しましてぇ~、何でも屋をしております、エェ、ハイ」
「そうなんだ。まぁジョーカーならどこも引く手絶無だろうけど」なんて事言うんだ。「にー君も何と無く察してるだろうけど、こいつ怪しさ満点でしょ? こいつ、これが素だから。根は真面目なんだけど、素が怪しさ満点なせいで、誰にも信用されないし、絶対裏切るだろこいつって思われて、依頼も仕事も大体面倒臭い事になるんだぜこいつ」悲し過ぎるでしょ。
「不思議デスヨネェ……ワタクシ、真面目に職務を熟してるだけナノニ、ドォーしてか、信頼して貰えなくてぇ~。誠心誠意尽くしてるんデスケドネェ~。もっと上手く口八丁で騙していかないと、デスヨネェ」デスヨネェ、じゃないんだが。
「う~ん、根が真面目か分からないけど、確かに信頼を築くのが大変そうな人だなって感じですね」素直に感想をぶちまけるよ。「あぁ、それでシンさん。ジョーカーさんが、旅行に連れてってくれるそうなんですけど、何か知りません?」
「旅行~? 何も聞いてないけど」お腹をポリポリ搔きながら欠伸を浮かべるシンさん。「何? ジョーカー、あんた旅行業者にでもなったの?」
「イエイエェ~、何でも屋デスヨ何でも屋。今はチョォーット、神否荘の皆様を地獄へ……旅行へお連れしたくてデスネェ……」言い回しが不穏過ぎて何も頭に入ってこない。
「地獄ぅ~? あぁ、何だっけ。にー君前に何か言ってなかった? 日色さんが地獄に遊びに来いって。それかな?」あぁー何かそんな夢を見た気がするって話した気がする奴だ。
「なるほど、それで地獄」やっと納得するポイントが出てきた。「じゃあジョーカーさんは祖母ちゃんに頼まれて来たんですか?」
「ンフッ、エェーット、極秘事項なのでぇ~、お話デキマセーン、ンフッ」この怪しさが素なのヤバいな。
「どうしよう、俺ここまで信用できない人初めてだよ」神否荘に係わってから色んな人に遭遇したけど、ここまで信用できない人は初めてだ。「シンさん、この人本当に信用しても良い感じなの??」
「ん~、まぁ良いんじゃない? 知らんけど」雑過ぎる。「あたしは知り合い補正で見ちゃうから別に何とも思わないけど、何も知らなかったら胡散臭さしかないしねこいつ」酷い言われようだけど納得しかない。
「ゴメンナサイ、まだ人を言い包める技術が伴ってないのデスゥ~、もっと上手く言い包められるようにぃ~、努力を怠らないようにシマスゥ~」言い方~。
「うーん、まぁシンさんが大丈夫って言うなら……」いや、シンさんが大丈夫って言って大丈夫な訳が有るのか謎な気がするけど。「じゃあ皆さんにお伝えしてきますね~。旅行行こ~って」
「ワァー、アリガトゴザマス~。ンフッ、ちゃんと騙せてヨカッタ~」早速伝えに行くのが嫌になっちゃったぞ。「シンサンもアリガトゴザマス~。お陰で一人上手く騙せマシタァ~」おいおい、まだ俺立ち去ってないんだぜ。
「それだよそれそれ。言い方もひでぇし何より隠せよそういう事は」シンさんが呆れ果てた様子で煙草をぷかぷか吸ってる。「お前それで何回依頼ポシャったか憶えてねーのか」
「アウゥ~、失礼しマシタァ~。ドォーしてもワタクシ、嬉しくなると本音が出ちゃってぇ~。人を騙すのって、気持ちイイデスカラァ~」
「えーっと……俺どうしたら良い?」シンさんに振り返っちゃったよ俺。
「まぁ、何だ。あたしが言うのも何だけど、こいつこれでも、言動と行動と思考回路以外はマトモだから。たぶん」それ他のどこにマトモな要素有るの??
と言う訳で。
怪しさ満点なシンさんの知り合いの何でも屋と地獄……じゃなかった、旅行に行く事になりました。
シンさんの言質が有っても無くても信用しちゃダメな気しかしないけど、まぁ神否荘の住人が一緒なら大丈夫かな……的なアレである。
🌠後書
新章開幕です! 今回も新キャラ登場と言う事で、怪しさ満点のジョーカーさん! 私の考え得る限りとにかく怪しさを全面に押し出してみましたが、いかがでしょうか…!ww(笑)
今回は旅行編と言う事で、水先案内人…じゃなかった、案内人が欲しかったので新規でキャラクターを書き起こす事にしたのですが、思いのほか面白くて困っておりますww これで根が真面目とか最高では…???w(自画自賛
どこに旅行へ向かうのか、もう想像が何と無く付いてるとは思いますが、どうかお楽しみに!ww
と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!
🌸以下感想
とみ
更新お疲れ様ですvv
これまたいぃ~塩梅のキャラでございますなw
語尾のワーとかカーとか、うっかりだだ漏れちゃう本音とかw先生が入れ込んじゃうのもよくわかります。
そんな方を案内人に据えての旅行編、立ち込める暗雲さえも裸足で逃げてく神否荘の方々ならば問題はなかろうwwむしろ案内人が…
今回もたのしませていただきましたー!
次回も楽しみにしてますよーv破廉恥だもん仕方ないよね。
2024年5月27日月曜日 22:29:55 JST
夜影
>とみちゃん
感想コメントありがとうございます~!(´▽`*)
でしょでしょ!ww 中々良い塩梅のキャラクターに仕上がってホクホクですw
立ち込める暗雲さえも裸足で逃げてくwwwwww神否荘そういうところ有り過ぎ問題wwwww(笑) 確かにwwwむしろ案内人の方が心配になる奴!wwwww(笑)
今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!(´▽`*)
次回もぜひぜひお楽しみに~!! ちゃうんやってwwwwww(笑)
2024年5月27日月曜日 22:35:49 JST
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