2024年9月25日水曜日

第23話 応報の果てに〈2〉

ミスト・ヴィレッジ在住一般冒険者の日常(FF14二次創作小説)
第23話 応報の果てに〈2〉

第23話 応報の果てに〈2〉


「――手掛かりか分かんないけど、ツバキちゃんが立ち寄りそうな場所、一つだけ心当たりが有るよ! ミスト・ヴィレッジのアパルトメント!」

 ツトミがそう宣言したのを聞いて、ユキとミリは頷き合い、三人はその足でミスト・ヴィレッジのアパルトメント――トップマストまでやって来た。
 ロビーに駆け込むと、ハウジングの管理人のルガディン族の男が「おや?」と不思議そうに声を掛けてきた。
「もしやツバキさんに御用ですか?」「え? そうなの、ちょっと急ぎで~」「ツバキさんなら丁度先ほど、部屋を解約して荷物を纏めて出て行かれましたが……」「なにぃ~」
 ツトミが思わずと言った様子でルガディン族の男に食って掛かる。
「ツバキちゃん、何か言ってませんでした!?」
「いえ、特別何も……とにかく急いでいたようでしたので、お引止めするのも憚られまして……お部屋は今空室になってますが、覗いていかれますか?」
「ちょっと覗いて行ってみても良い?」
 ユキとミリを振り返って尋ねるツトミに、二人はその鬼気迫る雰囲気の彼女に気圧されるように、コクコクッと頷き返す。
「鍵は変更してないので、ツトミさんがお持ちの鍵でお部屋に入れますので、どうぞごゆっくり」
 ルガディン族の男が礼儀正しくお辞儀を見せるのも待っていられない様子で、ツトミはトップマストの階段を駆け上がり、廊下を駆け抜け、元ツバキの部屋に侵入する。
 中はもぬけの殻で、家具と言う家具が消え失せ、無音の空間となっていた。
 生活の跡が何も残っていない、次に入る購入者の為に綺麗に整った空室。
「ツバキちゃん……」
 ツトミの声が虚空に溶けていく。
 ここまで徹底する何かが、ツバキの身に起きている。その事実が、三人の心を静かに蝕んでいた。
「およ? 入り口で立ち往生して如何された? 中に入らないので御座るか? それとも、皆もツバキ殿の冷蔵庫が空っぽで困っているので御座るか?」
 そこに、何の事情も知らない態で現れたのは、腹ペコ侍だった。
「サクちゃん! ツバキちゃんが居なくなっちゃったの、何か知らない?」
 ツトミがサクノの肩を掴んでぐわんぐわん揺らし、彼女は、「グワァーッ、脳が揺れるッ、脳が揺れるで御座るよーッ!」と悲鳴を上げた。

◇◆◇◆◇

「ふぅむ……なるほど、ツバキ殿の部屋が伽藍洞になったのはそういう……」
 暫くして落ち着いた後、四人は何も無い部屋の真ん中で車座になって膝を突っつき合わせる事になった。
 サクノは難しい表情のまま、腕を組んで小首を傾げていたが、やがて何か思いついたように頭の上に電球が点った。
「カレハ……そう、カレハと言う名、聞き覚えが有るで御座るよ」ポン、手を打つサクノ。「ひんがしの国の話で御座るが、或る没落武家の忍び頭の名が、そう、カレハと……」
「没落武家?」ユキがよく分かっていない風に眉根を寄せる。
「然り。当主が暗殺された事で、忍び衆も侍衆も散り散りになったと」サクノはコクンと頷く。「尤も、当主が暗殺されたのも故有っての事。ガレマール帝国に擦り寄り、甘い蜜を吸っていたとは噂で御座るが……」
「ツバキさん……主の仇、って……言われてましたね……」ミリがポツリと呟く。「もしかして……」
「……ツバキちゃん、悪代官を暗殺した事で、その下っ端達に恨まれてる、って事……?」
 思ったよりシンプルな事情が分かり、四人は顔を見合わせる。
「単純明快とは言え、相手は恐らく軍勢とさえ言える規模で御座ろうな。それこそガレマール帝国の軍人すら一枚噛んでいたとしても不思議ではあるまい」難しい表情で腕を組むサクノ。「我々を遠ざけようとするのも気持ちは分からんでも無いが……流石に独りで何とかなる問題ではなかろうに。ツバキ殿、それは悪手と言うものだ」
「サクちゃんもそう思う?」ツトミが不機嫌そうに呟く。「ツバキちゃん、ツトミ達を侮り過ぎだよね。もっと頼ってくれても良いのに」
「事情は分かったわ。だったら後はどうするかだけ」ポン、と手を叩くユキ。「勿論ツバキを助ける。……で、良いのよね?」
「このまま、放っておく訳には……いきません……!」両手を握り締めて力を籠めるミリ。「ツバキさんを、私達の手で、助けましょう……!」
「そうと決まれば行動しなくちゃ!」ツトミがすっくと立ち上がる。「サクちゃん、その没落武家の事、もっと教えて!」
「心得た! ……と言いたいところで御座るが、拙者も知っているのは今し方語った話ぐらいでな。詳しくは現地で調べねばなるまい」
「現地? って事は~……」
「そう、ひんがしの国。クガネに行くで御座るよ」
 コクリとサクノが頷き、三人も神妙に頷き返した。
 そうして四人は早速動き出した。リムサ・ロミンサからクガネ行きの船を探す為に。
 そんな折、レンとケータからリンクシェルに連絡が入り、一同は更に驚く事になる。
「黒渦団に立ち寄ったら、フリーカンパニーが解散したって報せを受けたんだけど、何が遭ったの?」「ぼ、僕もビックリしちゃって、話を聞こうにも、ツバキさんに連絡が取れないしで……」
「ツバキちゃん……!」
 また先手を打たれた事にショックを隠し切れない様子で悶えるツトミに、レンは「取り敢えず、事情を説明して貰える? こっちも混乱してるんだけど……」と、宥めるように話を促す。
 刻一刻と事態が悪化の一途を辿っているものの、糸のような手掛かりは掴めた。
 このままツバキが居なくなる前に、決着を着けなければならない。そう決意を新たに、ツトミ達はレンとケータに事情を説明し、彼らもクガネに行く事を決めるのだった。
 日暮れのリムサ・ロミンサは、秋風が吹き込み、残暑もいよいよ終わりが見えてきたかのような涼しさが立ち込めていた。
 ツバキの影は、未だ見えない。

🌠後書

 約20日振りの更新になります! 大変お待たせ致しましたーッ!(定型文)
 最終エピソードに相応しい展開なのですが、まさかリアルと同期するとは思っていませんでしたね…w Gameの方のFF14世界のツバキちゃんは消えて無くなってしまいましたが、物語上のツバキちゃんの行方ははてさて!
 …ちと不安を煽るような文章になってしまった気がするので一応これだけ。この物語はバッドエンドにする予定は無いので、最後はどんな形であれ皆ハッピーで最終回を迎える予定です。どんな形であれ、ね!
 と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    不穏しか感じません。
    「最後はどんな形であれ皆ハッピーで最終回を迎える予定です。どんな形であれ、ね!」
    めちゃめちゃ気になります。ハッピーの形は人によってちがうのでは…などと考えてしまいます。

    今回も楽しませていただきました!
    次回も楽しみにしていていいのかな…

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    1. >とみちゃん
      感想コメント有り難う御座います~!(´▽`*)

      不穏しか感じない…!! サクノさんでその辺軽減できないかなって思いましたけれど、軽減率が足りなかったか…っ!!!
      「ハッピーの形は人によってちがうのでは…」ってもう完全に疑心暗鬼に陥っていらっしゃる…!ww 尤も、私の作品の経歴を知るとみちゃんですから、どんな形のハッピーが出てくるのかもうドキドキで仕方ないと言うのも分からないでも無いです…!ww
      もっと厳密にお伝えするなら、「空落」っぽいハッピーエンドではなく、「霊夏」っぽいハッピーエンドの予定、とお伝えするべきだったかな…??

      今回もお楽しみ頂いて嬉しいです~!(´▽`*)
      次回もぜひぜひお楽しみに!ww 不安がらないで!wwww(笑)

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2025/10/19の夜影手記 🌸挫け気味なのでこっそり愚痴を吐かせて~😣