2024年10月3日木曜日

第25話 応報の果てに〈4〉

ミスト・ヴィレッジ在住一般冒険者の日常(FF14二次創作小説)
第25話 応報の果てに〈4〉

第25話 応報の果てに〈4〉


「――――それでは、私は何も聞いてなかった振りをしますので、皆さんもその……あんまり無茶苦茶しないでくださいね……?」

 ひんがしの国、クガネ。港町として開かれたその都市で、ウイとカレハが行うであろう取引を、ツトミ達はこっそり監視する選択をした。
 カレハもまさか雇われ彫金師がツバキの友人である事など露にも知らないだろうし、そこから得られる情報が有るかも知れないとはサクノの談である。
 ウイとは距離を取りながら、柱の陰などの物陰に身を潜めながら、取引が行われる場所である、クガネ最大の酒場、“潮風亭”に入って行く。
 煌びやかな店内に気後れしそうになりながらも、ウイの小さな人影を見失わないように追跡していると、彼女の視線の先に彼が――カレハが、素顔を隠そうともせず、平然と姿を現した。
「……!」
 ツトミが思わず息を呑む気配を察し、サクノが抑えるように手で制止する。
 ウイは事情を知らないふりをしているのか、いつものおどおどした態度でカレハを見上げる。
「あの、依頼人の……カレハさん、ですか?」
「如何にも。貴殿が彫金師の遣いである、ウイ殿、だな?」
「はい、間違いありません。依頼されていた追跡君ですが……」
「その件なのだが、無用になった。違約金は支払う。済まない事をした」
「えっ……?」
 驚いた表情を浮かべるのはウイだけではなかった。こっそり物陰から話を聞いていたツトミ、サクノ、ユキ、ミリも同様に表情を強張らせる。
 無用になった。彼は確かにそう言った。それは、つまり……!
「違約金はこちらにて」カレハはそっとギルの入った袋を手渡すと、厳かに東方風のお辞儀をして、「それでは」と有無を言わさぬ態度で立ち去ってしまった。
 ウイはギルの入った袋を受け取った瞬間から慌てふためいていたが、カレハは気づいた様子も無く足早に去って行く。
「ありがとウイちゃん、後はツトミ達の問題だから」
 ウイの肩をポンと叩き、柔らかく微笑むツトミに、彼女は悔しそうな、悲しそうな表情を返し、小さく頭を振って、決意を固めた様子でツトミを見返した。
「いいえ、いいえ! ツバキさんにはまだ返してない借りが有ります! 私にもまだ、何か出来る事が有る筈……!」
「ウイちゃん……」ツトミも痛みに耐えるような表情を返すと、すぐに意識を切り替えて頷いた。「追跡君、貸してくれる?」
 ツトミの申し出に、ウイは嬉しそうにはにかみ、「勿論です!」と快諾するのだった。

◇◆◇◆◇

「――――ミコッテ族の冒険者かい? 名前が……ツバキねぇ。いやぁ、そんな冒険者、巷に溢れてるからねぇ……特徴もありきたりだし、特別思い当たる事は無いねぇ」
 リムサ・ロミンサを離れ、西ラノシアに在るエールポートで聞き込みを行っていたレンとケータは、空振りになった事を確認しつつ、肩を竦め合っていた。
「やっぱりそうそう手掛かりなんて掴めないわよね。特にツバキって双剣士ギルドだっけ? の関係で、痕跡って全然残しそうに無いし」「それは偏見じゃ……?」
 レンの諦観に、ケータが思わずツッコミの手を入れる。
 何か少しでもツトミ達の状況を良くする情報を得られればと、リムサ・ロミンサから離れて手掛かりを探しに来た訳だが、今のところそれらしい情報が何も掴まらず、徒に時間だけが過ぎていく。
「って、今まで思い当たらなかったのが不思議なぐらいだけど、双剣士ギルドに当たってみるのはどうかしら? エーデルワイス商会だっけ? 秘密裏に暗躍してる、シーフのギルド」
「僕達が直接押しかけて、話を聞いてくれるのかな……」不安そうに俯くケータ。「ツバキさんと同じフリーカンパニーってだけで、信頼してくれるかな……?」
「そこは出たとこ勝負でしょ。まずはぶつかってみて、話はそれから! さ、行くわよケータ!」
「レンさんは、採掘師で収まる器じゃないと思うよ僕……」
 レンを追い駆けてリムサ・ロミンサに舞い戻り、エーデルワイス商会の在る倉庫へと向かったケータは、そこで番人であるルガディン族の男に、恐る恐る声を掛けるのだった。
「……ツバキか。込み入った話になるだろうし、ひとまず中に入れ」
 まさかすんなりと入れてくれると思ってなかった二人は、虚を衝かれたような表情を返して、エーデルワイス商会の倉庫こと、双剣士ギルドの拠点に足を踏み入れた。
 中に入ると無数の人間から刺すような視線を突き付けられたが、すぐに霧散する。外敵ではないと判断されたのだろう。
「ツバキの事だが、」番人だったルガディン族の男が続けた。「ちょっと前の事だ。双剣士ギルドを脱退して、今は俺達とも通信を断絶してる」
「双剣士ギルドも辞めちゃうなんて……」言葉を失いかけるレン。「よっぽどの事じゃない。もうあたし達が手を出してどうこうなる問題なのかしらこれ……」
「お前達も事情に詳しい訳ではないのか。知っている範囲で良いから、聞かせてくれないか? 俺達もこう見えて心配してるんだ」
 ルガディン族の申し出に、レンとケータは顔を見合わせると、ツトミ達から聞いた分の情報を説明する事になった。
「……カレハ、か。確かにひんがしの国の出身に居そうな名だが……。サクノと言う奴は、確かに没落武家の忍び頭だと言っていたんだな?」
 番人の男が難しい顔で顎を擦り始めたのを眺めながら、レンとケータはコクンと頷く。
 番人の男は得心したのか一つ頷くと、二人を見据えて厳しい表情を見せた。
「俺の予想だが、ツバキはもう帰って来ねえな。恐らくは決着を着けるつもりだ」
「帰って来ないって……どういう事?」
「言葉の通りだ。ツバキがお前らの前に姿を現す事は、恐らくもう、二度とねえだろうよ」

🌠後書

 4日振りの最新話更新です! ちょこっとお待たせ致しましたーッ!
 と言う訳でもう不穏な要素を無限にお出しし続けている感じです。これだけ不穏な要素が出ているのにバッドエンドではない終わり方なんて有るのか…?? って感じですけれど、もう信じて貰えない気がしてるので特に何も言いませんw
 あと2~3話で最終回を迎える予定ですが、展開によってはもう少し長くなったり短くなったりするかもです。私はただ彼らが取るであろう選択を、丁寧にテキストに落とし込んでいくだけなので、最後まで未来がどうなるか、その時になるまで分からないのです。
 SNSを断ったからには執筆速度も上がる筈! 近い内に最新話を更新に参りますので、どうかお楽しみに!
 と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    もうね、バッドエンドしか見えてこないんですが…
    追跡君が不要になったカレハさん、もう帰ってこねぇなって言ってる顔色が良くない大男、心配してる双剣士ギルド…
    不安要素しかねぇぇぇぇぇぇ!

    これはあれだ、きっとトワリちゃんが虹の橋をかけてくれて全て解決だな。ウンウン(謎

    焦っても仕方がないので、彼女たちがうまいことやってくれるのを待ちますわw

    今回も楽しませていただきました!
    次回も楽しみにしてますよーv

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    1. >とみちゃん
      感想コメント有り難う御座います~!(´▽`*)

      そうでしょうそうでしょうww 不安要素をモリモリ提供してるので、もうそれしかないっ、って感じだと思いますが、最後はちゃんとハッピーエンドですので!www

      トワリちゃんwwww遂に作品の垣根を越えて…?!?!?www(笑)

      実はもう最終話まで書き上げてしまったので、今日にでも最終話手前の話と、最終話を投稿しに参る予定です!
      最終話手前は一番「ばかーっ!!!!」ってなる展開なので、最終話と一緒に投稿する予定ですw 作者のばかばか!ってなったら困るので…!www(笑)

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~!!

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