2024年12月21日土曜日

第11話 あなたがまっすぐに認めてくれるから

呪を言祝ぐ冒険者(FF14二次創作小説)
第11話 あなたがまっすぐに認めてくれるから
第11話 あなたがまっすぐに認めてくれるから

「えと……どう説明したら良いのか……」
 二人組の黒渦団が立ち去ってから少しして、ようやっと声が出せるくらいには落ち着いたものの、セクレアさんを前にして、上手く言葉が出てこなかった。
 セクレアさんはそんな私を静かに見つめるだけで、急かそうともしないし、呆れてしまう事も無く、私の言葉が出るのを辛抱強く待ってくれた。
「分かる事からで良いぜ。自分の言葉に嚙み砕いて、話せる事を話しな」
「その……それが、」と、やっと言葉が出そうになった瞬間、茂みが揺れて、奥からガージアさんが姿を現した。
「おう、どこ行ってたんだガージア?」
「野暮用だ。それより――――」ガージアさんが私を見つめる。その視線には怪訝な色が滲んでいた。「……何故庇った? この状況下で、俺を庇う道理は無い筈だが?」
「えと……そう、ガージアさんも聞いてください!」私は二人に向かって、精一杯頭の中で整理した言葉を吐き出し始める。「私っ、変な病気に罹ったかも知れないんですっ!」
 二人は一瞬間の抜けた顔をした後、互いに視線を交わし合ってから、不思議そうに小首を傾げたり肩を竦めたりした。
「変な……」「病気……?」
「はい……何て言うか、こう……見えてはいけない物が見えてしまって……黒渦団……でしたっけ? のお二人が、タイタン様? とか言うのを信じてて、帝国軍と取引したとか……そう、それでガージアさんに銃撃したとか、そういうのが、こう……聞こえたと言うか、見えたと言うか……」
 何とか捻り出すように言葉を漏らしていると、ガージアさんもセクレアさんも見る間に表情を強張らせて、互いに緊張感の宿った瞳で私を見つめてきた。
「……まさか、こんなところで……」ガージアさんがポツリと漏らすと、セクレアさんの顔を窺うように一瞥すると、嘆息を落とした。「その、何だ。よく分からない病気を理由に、俺を庇ったのか、お前は」
「はぃ……何か、嫌な予感がしたんです……」悄然と俯いてしまう。「あの二人組が、本当に悪い人だったら、ガージアさんと会ったら……大変な事になるんじゃないかって、それで……」
「なるほどなぁ」セクレアさんが真剣な表情で頷く。「ウイなりに危険だって察知できた理由はそれか。大した観察眼かと思いや、そういう事も有るのか、なるほどねぇ」頻りに頷いて確かめるように舌の上で言葉を転がしている。「ウイ。その病気とやらは、今までもそういう症状に悩まされた事は有るのか?」
「い、いえ……今のが初めてです……やっぱり私、呪術士として冒険者を続ける以前に、入院でもした方が良いんでしょうか……?」
 尋ねながら、その選択はどうしても選びたくないと言う意志で、表情が情けなく歪んでしまうのを止められなかった。
 錬金術師ギルドで稼いだギルは有る。それを冒険者として工面するのではなく、己の入院費に当てて、今後病床の身になるなど、とてもではないけれど受け入れ難くて、現実を呪ってしまいそうになる。
 セクレアさんと一緒に居て、ガージアさんと出会えて、少しだけ冒険者としての道に光明が見えたのに、こんなところで躓いていたくない……!
 セクレアさんとガージアさんが目配せして、互いに何か言いたそうに牽制し合うように視線で何かしらのやり取りをしていたけれど、先に口を開いたのはガージアさんだった。
「簡潔に言おう。それは病気とはまた異なる現象、言わば能力だ。……“超える力”と言う単語に聞き覚えは無いか?」
「超える力……?」
 初めて聞く単語だったし、そんな現象を知っているガージアさんにも驚いた。
 もしかして私が無知なだけで、もっとよく知られている病気……じゃなかった、現象なのかな……?
「言葉、時間、精神……あらゆる壁を超え、相手を視る事が出来る力とされる。霊災が迫る時代に、超える力を持つ者は現れると言う話だが……」
 ガージアさんも半信半疑なのか、そこまで説明するも、私がその超える力を持つ人だとは信じていないようで、険しい表情で私を見つめるばかりだった。
「詳しいなガージア? 他にも知ってる事が有ったら教えてくれよ」
 おどけるような仕草でセクレアさんがガージアさんの脇腹を肘で突く。
 ガージアさんはその時はハッと我に返ると、「……そういう噂を聞いたまでだ。真偽までは知らん」とはぐらかしてしまった。
「ともあれ、だ。ウイのそれは病気じゃなく、冒険に役立てる異能だって事さ。深刻に考える必要はねーぜ、そういう臓器ないし、体の部位が増えたと思や良い。考え方次第さ」
 ニカッと少年っぽく笑いかけるセクレアさんに、私は胸を撫で下ろす想いで安堵の吐息を落とす。
 ……そういうセクレアさんも、何だか詳しそうな雰囲気だったけれど、敢えて口を挟む事はしなかった。
「で、立ち話も何だろ? 朝餉でも挟みながら、今の話をゆっくり吟味しようじゃねーか。ガージアも野暮用から帰って来た事だし、な?」
 ニヤ、と意地悪な笑みを覗かせてガージアさんを見つめるセクレアさんに、彼は呆れた風に肩を竦めるだけで、返答は無かった。

◇◆◇◆◇

「――――つまりガージア。お前は強盗団であって、強盗団じゃねー。って、認識で良いのか?」
「……そこの小娘が超える力……過去視で見ている以上、他に言い繕いようも無いだろう」
 昨夜と同じご飯、スタッフドアーティチョークを食べ終え、焚火の跡を破壊しながら、二人が話をしている。
「改めて自己紹介しよう。俺の名はガージアセレス・ウィクトリディア。或る組織に厄介になっている、諜報員だ。超える力をエオルゼアの為に行使する秘密結社と言えば聞こえは良いが、ただのボランティアみたいな組織の下っ端だと思えば良い」
「ほー、その組織にゃあ名に覚えが有るが、まぁアンタが言葉にしねーってんならオレも黙っていよう」ニヤリと笑うと、セクレアさんはガージアさんに握手を求めた。「セクレア・グディーエだ。まさかこんなところで秘密結社の一員と会えるたーな。やっぱ冒険はこうでなくっちゃな!」
「え、えと、ウウイ・ウイです」二人がフルネームを名乗ったのなら、礼儀なのかなと思って私も名乗り直す事にした。「有名な秘密結社……なんです?」
「ただの何でも屋だ。今回はコボルド族と取引をしている黒渦団の二人組が居ると聞いて、二重間諜をしていた訳だが……ガレマール帝国を秘密裏に襲撃し、最新型の炸薬を奪取、その炸薬を以て外地ラノシアのキャンプ・オーバールックを焦土と化す計画を知って、阻止する為に実行部隊に紛れ込んで、今こうして無事に炸薬を強奪して、逃げ果せている訳だ」
「全部言ったな?」意地悪そうな笑みを覗かせるセクレア。「正直で宜しい、オレはとても好感が持てたぜ?」
「……」険しい視線をセクレアに向けた後、ガージアさんは再び私に視線を転じた。「炸薬は昨夜、あの兎女に渡した小包だ。アレをリムサ・ロミンサまで持ち帰れば、俺の作戦は完了になる、筈だった」肩に手を添えて、もう傷跡が消えているそこを撫でる。「この負傷が無ければ、昨夜の内にデネベール関門を通ってリムサ・ロミンサまで逃げ切れたんだが、そこでお前らに遭遇した訳だ」
「ご、ごめんなさい……そんな大変な時に……」思わず頭を下げてしまう。
「寧ろ感謝している。あのままデネベール関門を無理に通過していれば、奴らの追撃を受けて恐らくは……」瞑目して鼻息を漏らすガージアさん。「傷も癒え、万全の態勢が整い、協力者にも恵まれた。これほどの幸運、中々無いだろう」
「まだ協力するとは一言も言ってねーが、そこまで正直に話されたら協力するのも吝かじゃねーな」ニカッと笑いかけるセクレアさんだ。「オレは冒険者ギルドの依頼で強盗団をふん捕まえられさえすりゃ御の字だったんだ、元々の方針にも問題ねえしな」
「後はお前次第だ、小娘……いや、ウイ」ガージアさんが私を見つめている。「協力してくれるか?」
「わ、私っ?」思わず自分を指差して瞠目してしまう。「私はその、セクレアさんについてきただけで、そのぅ……」
「俺を幾度と無く窮地から救ってくれたのは、紛れも無くお前だ。そこの兎女の方が腕が立つのは事実かも知れんが、俺はお前に意見を求めている」
 真剣な表情で、まっすぐ私を見つめてくるガージアさんに、私は。……応えなきゃ、って想いで満たされて、まっすぐに見つめ返して、頷いた。
「は、はい! 私も、ガージアさん、に、協力したいっ、です!」
「よく言ったウイ! お供に連れて来たオレも鼻が高いぜ!」
 頭の上から押さえつけるように撫で回されて、私はフラフラになったけれど、セクレアさんにも、ガージアさんにも、一人の冒険者として扱って貰えるのが、あまりにも嬉しくて。
 思わず笑みが浮かんでしまった。
 何の活躍も出来ないなんて、ずっと塞ぎ込んでいた自分が馬鹿みたいだった。
 戦えなかったら出来る事が何も無いなんて、嘘だった。
 背中を押されるように、私も少しだけ、先頭の風を感じる事が出来たのは、先輩冒険者の二人のお陰。
 だったら、私も出来る限りの事を、頑張らなくちゃ!
 そう思って二人を見返すと、二人とも満足そうな表情を返してくれて、それがとても嬉しくって。
 やっぱり私は、冒険者なんだなって、強く感じるのだった。

🌠後書

 丁度1週間振りの最新話更新です! お待たせ致しましたーッ!(何とか週刊連載の態を保ててて嬉しい顔w)
 と言う訳で前回遂に目覚めてしまった例の力、の説明やら、FF14本編ではあまりにも有名な秘密結社やらが登場する回になりました。物語上では名称が出てきてないので敢えて明言せずに続けますが、あの組織って秘密結社の割に割と人数多い印象なので、もしかしたらこういう構成員も居たのでは…と言う妄想ですw
 霊災が迫ると超える力を持つ者が現れる、と言う話に倣ったり、その力がどういうアレなのかもふわっと触れましたが、基本的に史実と言うか、本編に沿う形の設定で綴っております。違ってたらごめんね!w
 と言う訳でウルダハから飛び出してきて突然始まったラノシアでの冒険もいよいよ後半戦! どうか最後までお楽しみ頂けますように!
 と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    合言葉はのばら!誰もが知っている秘密の合言葉を用いる悪の秘密結社が満を持しての登場です!!!(言い方
    先生の言う通り確かにありそうなお話です。大所帯ですものねwすべてはエオルゼアのためにっ!!!

    だんだんと頼もしく成長しつつあるウイちゃん、理解してくれる仲間がいるって素晴らしい!パパも草葉の陰から(以下略

    今回も楽しませていただきました!
    次回も楽しみにしてますよーv

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    1. >とみちゃん
      感想コメント有り難う御座います~!(´▽`*)

      それ!www誰もが知っている秘密の合言葉wwww(笑) そしてやっぱり悪なのね!wwwww(笑)
      ですですw 作中でもサイドストーリー的な感じで、大所帯っぽい表現も有りましたし、ワンチャンそういう人も居たのではって言う…! エオルゼアのためにーっ!www(日本兵感有って好きwwww(笑))
      パパ、蒸発したどころかもう草葉の陰に行ってて笑うwwwまだ生死不明だから!wwwww(笑)
      やっぱり周りが理解してくれる仲間だと、成長も早いって事ですよね!(´▽`*) ウイちゃんの今後にもご期待ください!

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~!

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第14話 可能性を視て、未来を書き換えて

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