015.蒼炎竜騎士団〈3〉
015.蒼炎竜騎士団〈3〉
「――――護衛?」【蒼炎竜騎士団】の会議室で、リスタが眉根を寄せたのを見て、アリスは小さく首肯を返す。「そう、護衛だ。我々はこれより西の砦に遠征するのだが、その道中、そして砦内に蔓延っているであろうモンスターを追い払う役目を担って貰いたい。無論、貴様らが納得できるように報酬は弾もう。悪い話ではないと思うのだが、どうだろうか」 アリスは指を組んで、試すようにリスタを見据える。 リスタはアリスの思考の先を勘繰るように睨み据えていたが、数瞬瞑目すると、再びメンチを切り始めた。「これだけアホみてェな規模の猟団なのに、護衛が要るって事ァお前……相当ヤベェ依頼と見て良いんだな?」「ハンターに依頼するのだ、相応の危険は含まれていて当然だろう」表情を崩さずに応じるアリス。「猟団の規模で言えば、確かに我が【蒼炎竜騎士団】は狩人都市・アルテミスでも最上位に君臨する団員数を誇る、それは認めよう。だからと言って、貴様らのように駆け出しに毛が生えた程度のハンターにも拘らず、討伐数が少なく情報も出揃っていないであろう蛮竜・グレンゼブルを討伐するような、常軌を逸した実力者は数える程しか居ないのも確かだ。故にこそ、貴様らに依頼を持ち掛けた。無論、受けるのも断るのも貴様ら次第だ。良い経験が見込める事は請け負うがね」 ニヤリと口の端を歪めるアリスに、リスタは睨み据えるような眼差しのまま、数瞬の間を置いて舌打ちを返した。「お膳立てが過ぎるぜ団長様よォ。如何にもな理由を並べ立てて、俺達を生け贄に捧げようって魂胆が透けて見えるってもんだ。腹を割れよ。高が護衛に、自分ンとこの精鋭を出さずに問題児を運用する時点で、碌な依頼じゃねェって明言してるも同然なんだぜ? そこが言えねェなら受ける義理はねェ。とっとと帰って俺達は俺達の依頼を熟すだけだ」 アリスを睨み据えるリスタに、彼女は表情筋を崩さずに彼を見つめ続ける。 シアとクーリエも静かに動向を窺っていたが、ゼラフだけは泡を噴きかけない様子で慌てふためいていた。 暫しの沈黙の後、リスタが興味を失ったように視線を外して立ち去ろうとした、その瞬間。アリスが小さく両手を挙げて降参の意を示した。「アウェーであろうと、貴様は一歩も譲らんのだな。その気概に負けたよ」やれやれと肩を竦めるアリス。「リスタと言ったな。高が護衛に精鋭を出せない、と言ったか。それは断じて否だ。我が猟団の精鋭は、“全て投入する”。それでなお、生還できるか分からない難易度の依頼ゆえに、外様のハンターの助力さえ今は乞いたいのが現状なのだ」 アリスの宣言に、リスタは、そしてシアとクーリアも瞠目する。 狩人都市・アルテミスの最大規模の猟団が、全戦力を投じてなお、生還すら難しい依頼とは何なのか。 誰もそんな噂すら耳にしていない為に、法螺話かと怪訝な眼差しを団長に向けるが、彼女は意に介した様子も無く話を続ける。「それだけの経験が積めるとは即ち、それだけの危難を孕んでいる反証になると言う事だ。断るなら何も聞かずに帰ると良い。受けるのなら、話を聞いたら後戻りが出来ない事を承知の上で残る。簡単な話だ」 シアとクーリアは視線を交わし、頷き合う。ゼラフは意識を失ったように動いていなかった。 リスタはそんな三人の様子を見るまでも無く、どっかりと椅子に腰掛けた。不遜な態度で踏ん反り返り、アリスを見やる。「ヤベェ依頼だと明言したんだ、聴く義理ぐれぇは有ると見た。言えよ。聞いたら後戻りできねェも何も、そんなヤベェ依頼が失敗したらここがどうなるか分からねェのに、じゃあ怖いんで帰ります、とはならねェだろ」「……また、安請け合いしてる」はぁ、と溜め息を零すシア。「でも、リスタに、同感。そんな依頼なら、人手が多い方が、良い」「私達ぃ~、まだまだ新米のハンターなんですけどぉ~、お力になれるんでしょうかぁ~?」 クーリエがおっとりと小首を傾げると、アリスは確かに首肯を返した。「大人数での遠征になるからな、役割は必ず有る」首肯を返した後、改めて四人を見つめるアリス。「話を聴く意志が有ると見て良いようだな。では手短に。我々はこれから老山龍・ラオシャンロンの討伐に遠征する」「ラ、ラオシャンロン……!?」ゼラフが突然息を吹き返して悲鳴みたいな声を上げた。「歩く天災、動く霊峰とも称される、あの古龍を……!?」「流石に名前ぐらいは知っているか。そう、その古龍だ」首肯を返し、アリスはライツに視線を向けた。「狩人都市・アルテミスより西に位置する砦に約五日後に到達すると言う、古龍観測所からの通達が有ったのが、つい三時間前の出来事だ。これからハンターを募集し、迅速に砦へ赴き、迎撃態勢を整えてラオシャンロンを撃退ないし、討伐する」「君達がトラブルを起こしている間に、募集は既に始まっています。アルテミス中のハンターが集う事になりますが、相手は古龍。それも、移動するだけで厄災を運ぶ超弩級の規模を誇る古龍です、人数はどれだけ居ても足りるかどうか。それに君達も参加しないか、と団長は誘っている訳ですね」 ライツが眼鏡のブリッジを上げて補足説明を加えると、アリスは「そういう事だ」と満足気に首肯を見せた。「よし、だったらさっさと遠足に行こうぜ。歩く天災だろうが動く霊峰だろうが、モンスターっつぅーんなら斃せるんだ、報酬期待してるぜ」 もう話は終わったと言わんばかりに立ち上がり、リスタは会議室を後にしていく。 まるで話の重要性を理解していないかのような振る舞いに、シアとクーリエは驚いて彼を追い、放心状態だったゼラフはクーリエに首根っこを掴まれてズルズル引き摺られて会議室を後にした。 見送ったアリスとライツは、互いに視線を交わして、肩を竦め合った。「戦力にはなるかも知れませんが、協調性が無いのは致命的だと思うのですが、本当に彼らを連れて行くんですか?」ライツが呆れた風に髪を撫でる。「盾代わりになるかどうかも怪しいですよ?」「グレンゼブルを狩猟できる程の実力が備わってるのだ、戦力にならずとも先達ハンターとして経験は積ませるべきだろう」腕を組んで難しい表情を覗かせるアリス。「ハンターには等しくチャンスを与えるべきだ。そのチャンスを掴める者こそが未来を担う。現状維持に腐心し始めた時こそ、我々の時代の終焉だと思わないか、ライツ?」 アリスの試すような眼差しに、ライツは肩を竦めて返答しなかった。
◇◆◇◆◇
「ラ、ラオシャンロンの撃退戦に参加なんて、僕達に務まるのかな……?」 すっかり委縮してしまったゼラフが素の態度で怯えているのを見て、リスタはカッと小さく笑った。「先輩ハンターの胸を借りるつもりで行けよ、俺達はどうせ新米ハンターとして見られてるに決まってンだ。よっぽどのヘマを踏まねェ限り背中から斬りかかられる事もねェだろ」「リスタの、言う通り。ハンターの技、盗むつもりで、やろう」 シアが無表情のままこっくり頷くのを見て、ゼラフもやっと委縮した心が治ったのか、咳払いしてキザっぽく前髪を払った。「即ち、我らの実力を先達の狩人に誇示せし好機と言う事か……! 胸が躍るな……!」「おぅ、取り敢えず足を震わせながら言う台詞じゃねェーがな」「こ、これは武者震いと言う奴だ、緋色の盾使いよ」 ゼラフが赤面して反応すると、クーリエが「あはは~、ま~あ~、私達はぁ~、グレンゼブルの時みたいにぃ~、ちゃんと連携が出来ればぁ~、きっとぉ~、問題無いよぅ~♪」ポンポン、とゼラフの肩を叩いて宥める。「それにこれはチャンスだぜ、シア」リスタはシアに向き直って獰猛に笑む。「【紅蓮の灯】はここに在り、って主張できる、またと無いチャンスだ。あわよくば団員を増やせるかも知れねェし、何なら“紅蓮の灯”に関する情報も舞い込むかもだ」「……抜け目、無いね」若干瞠目するシア。「それとも、初めから……?」「利用できるもんは何だって利用していくべきだろ。俺ァとっとと名うてのハンターになって、探し物の情報を手に入れてェんだ。テメエとは目的が違っても、道程はほぼ同じだろ? だったら迷わず突き進むべきだ、違うか?」 リスタが挑戦的な笑みを浮かべて宣言する。それを聞いた三人は、初めてリスタの目的を知れた事に驚き、ゼラフは思わず踏み込んでしまう。「緋色の盾使いよ、失せ物探しの為にハンターになったのか?」「あ? あぁ、そう言や話してなかったか」リスタは真顔に戻り、立ち止まって三人に向き直った。「俺ァ人を探してる。そいつらを探す為には、ハンターになるのが手っ取り早いからハンターになったまでだ」「探してる人、ハンターって、事?」シアが小首を傾げる。「――そうだ。もう何年も前に行方知れずになったハンターを、俺ァ探してる。テメエらも知ってたら教えてくれ。フォアンって大剣使いと、ベルフィーユって弓使いだ」「それって――――」シアが思わずと言った風に口を開きかけた瞬間、ゼラフが「で、伝説のハンターのフォアンとベルフィーユの事かい!?」と言う声に掻き消されてしまった。「やっぱり伝説になってるのか」ガシガシと頭を掻いて面倒臭そうに応じるリスタ。「そう、そいつらを探してる。この狩人都市・アルテミスに来たのもそれが理由だ」「なるほどねぇ~。アルテミスってぇ~、元々ベルフィーユさんの功績を認めてぇ~、弓の神様としての称号として授けられたぁ~、【猟弓・アルテミス】から来てるもんねぇ~」のんびりした口調で続けるクーリエ。「ベルフィーユさんが元々管理していた都市だからぁ~、その名を冠してぇ~、今は狩人都市・アルテミス、って言われるようになったって聞いたよぉ~」「おぅ、詳しいじゃねェか」若干驚いたような表情を覗かせるリスタ。「その調子でそいつらの情報も囀ってくれりゃ助かるんだがよ」「ごめんねぇ~、フォアンさんも~、ベルフィーユさんも~、会った事は無いし~、又聞きでそう聞いただけだから~、詳しくは無いんだぁ~」 てへぺろ~っとするクーリエにリスタは「謝るこたねェよ、だからこそ俺ァ名うてのハンターになって、伝説のハンターに近い奴らからそういう話を聴くつもりなんだからよ」と、肩を竦めて応じる。 四人はそこで話が途切れ、ふと疑問になったクーリエが不思議そうに小首を傾げた。「ところでぇ~、リスタ君~? これ~、どこ向かってるの~?」「は? 俺が知りてェんだが」「え? ボクも知らない」「私は君達に付いてきただけだが……?」 四人は立ち止まり、間の抜けた顔を見合わせるのだった。
「――――護衛?」
【蒼炎竜騎士団】の会議室で、リスタが眉根を寄せたのを見て、アリスは小さく首肯を返す。
「そう、護衛だ。我々はこれより西の砦に遠征するのだが、その道中、そして砦内に蔓延っているであろうモンスターを追い払う役目を担って貰いたい。無論、貴様らが納得できるように報酬は弾もう。悪い話ではないと思うのだが、どうだろうか」
アリスは指を組んで、試すようにリスタを見据える。
リスタはアリスの思考の先を勘繰るように睨み据えていたが、数瞬瞑目すると、再びメンチを切り始めた。
「これだけアホみてェな規模の猟団なのに、護衛が要るって事ァお前……相当ヤベェ依頼と見て良いんだな?」
「ハンターに依頼するのだ、相応の危険は含まれていて当然だろう」表情を崩さずに応じるアリス。「猟団の規模で言えば、確かに我が【蒼炎竜騎士団】は狩人都市・アルテミスでも最上位に君臨する団員数を誇る、それは認めよう。だからと言って、貴様らのように駆け出しに毛が生えた程度のハンターにも拘らず、討伐数が少なく情報も出揃っていないであろう蛮竜・グレンゼブルを討伐するような、常軌を逸した実力者は数える程しか居ないのも確かだ。故にこそ、貴様らに依頼を持ち掛けた。無論、受けるのも断るのも貴様ら次第だ。良い経験が見込める事は請け負うがね」
ニヤリと口の端を歪めるアリスに、リスタは睨み据えるような眼差しのまま、数瞬の間を置いて舌打ちを返した。
「お膳立てが過ぎるぜ団長様よォ。如何にもな理由を並べ立てて、俺達を生け贄に捧げようって魂胆が透けて見えるってもんだ。腹を割れよ。高が護衛に、自分ンとこの精鋭を出さずに問題児を運用する時点で、碌な依頼じゃねェって明言してるも同然なんだぜ? そこが言えねェなら受ける義理はねェ。とっとと帰って俺達は俺達の依頼を熟すだけだ」
アリスを睨み据えるリスタに、彼女は表情筋を崩さずに彼を見つめ続ける。
シアとクーリエも静かに動向を窺っていたが、ゼラフだけは泡を噴きかけない様子で慌てふためいていた。
暫しの沈黙の後、リスタが興味を失ったように視線を外して立ち去ろうとした、その瞬間。アリスが小さく両手を挙げて降参の意を示した。
「アウェーであろうと、貴様は一歩も譲らんのだな。その気概に負けたよ」やれやれと肩を竦めるアリス。「リスタと言ったな。高が護衛に精鋭を出せない、と言ったか。それは断じて否だ。我が猟団の精鋭は、“全て投入する”。それでなお、生還できるか分からない難易度の依頼ゆえに、外様のハンターの助力さえ今は乞いたいのが現状なのだ」
アリスの宣言に、リスタは、そしてシアとクーリアも瞠目する。
狩人都市・アルテミスの最大規模の猟団が、全戦力を投じてなお、生還すら難しい依頼とは何なのか。
誰もそんな噂すら耳にしていない為に、法螺話かと怪訝な眼差しを団長に向けるが、彼女は意に介した様子も無く話を続ける。
「それだけの経験が積めるとは即ち、それだけの危難を孕んでいる反証になると言う事だ。断るなら何も聞かずに帰ると良い。受けるのなら、話を聞いたら後戻りが出来ない事を承知の上で残る。簡単な話だ」
シアとクーリアは視線を交わし、頷き合う。ゼラフは意識を失ったように動いていなかった。
リスタはそんな三人の様子を見るまでも無く、どっかりと椅子に腰掛けた。不遜な態度で踏ん反り返り、アリスを見やる。
「ヤベェ依頼だと明言したんだ、聴く義理ぐれぇは有ると見た。言えよ。聞いたら後戻りできねェも何も、そんなヤベェ依頼が失敗したらここがどうなるか分からねェのに、じゃあ怖いんで帰ります、とはならねェだろ」
「……また、安請け合いしてる」はぁ、と溜め息を零すシア。「でも、リスタに、同感。そんな依頼なら、人手が多い方が、良い」
「私達ぃ~、まだまだ新米のハンターなんですけどぉ~、お力になれるんでしょうかぁ~?」
クーリエがおっとりと小首を傾げると、アリスは確かに首肯を返した。
「大人数での遠征になるからな、役割は必ず有る」首肯を返した後、改めて四人を見つめるアリス。「話を聴く意志が有ると見て良いようだな。では手短に。我々はこれから老山龍・ラオシャンロンの討伐に遠征する」
「ラ、ラオシャンロン……!?」ゼラフが突然息を吹き返して悲鳴みたいな声を上げた。「歩く天災、動く霊峰とも称される、あの古龍を……!?」
「流石に名前ぐらいは知っているか。そう、その古龍だ」首肯を返し、アリスはライツに視線を向けた。「狩人都市・アルテミスより西に位置する砦に約五日後に到達すると言う、古龍観測所からの通達が有ったのが、つい三時間前の出来事だ。これからハンターを募集し、迅速に砦へ赴き、迎撃態勢を整えてラオシャンロンを撃退ないし、討伐する」
「君達がトラブルを起こしている間に、募集は既に始まっています。アルテミス中のハンターが集う事になりますが、相手は古龍。それも、移動するだけで厄災を運ぶ超弩級の規模を誇る古龍です、人数はどれだけ居ても足りるかどうか。それに君達も参加しないか、と団長は誘っている訳ですね」
ライツが眼鏡のブリッジを上げて補足説明を加えると、アリスは「そういう事だ」と満足気に首肯を見せた。
「よし、だったらさっさと遠足に行こうぜ。歩く天災だろうが動く霊峰だろうが、モンスターっつぅーんなら斃せるんだ、報酬期待してるぜ」
もう話は終わったと言わんばかりに立ち上がり、リスタは会議室を後にしていく。
まるで話の重要性を理解していないかのような振る舞いに、シアとクーリエは驚いて彼を追い、放心状態だったゼラフはクーリエに首根っこを掴まれてズルズル引き摺られて会議室を後にした。
見送ったアリスとライツは、互いに視線を交わして、肩を竦め合った。
「戦力にはなるかも知れませんが、協調性が無いのは致命的だと思うのですが、本当に彼らを連れて行くんですか?」ライツが呆れた風に髪を撫でる。「盾代わりになるかどうかも怪しいですよ?」
「グレンゼブルを狩猟できる程の実力が備わってるのだ、戦力にならずとも先達ハンターとして経験は積ませるべきだろう」腕を組んで難しい表情を覗かせるアリス。「ハンターには等しくチャンスを与えるべきだ。そのチャンスを掴める者こそが未来を担う。現状維持に腐心し始めた時こそ、我々の時代の終焉だと思わないか、ライツ?」
アリスの試すような眼差しに、ライツは肩を竦めて返答しなかった。
◇◆◇◆◇
「ラ、ラオシャンロンの撃退戦に参加なんて、僕達に務まるのかな……?」
すっかり委縮してしまったゼラフが素の態度で怯えているのを見て、リスタはカッと小さく笑った。
「先輩ハンターの胸を借りるつもりで行けよ、俺達はどうせ新米ハンターとして見られてるに決まってンだ。よっぽどのヘマを踏まねェ限り背中から斬りかかられる事もねェだろ」
「リスタの、言う通り。ハンターの技、盗むつもりで、やろう」
シアが無表情のままこっくり頷くのを見て、ゼラフもやっと委縮した心が治ったのか、咳払いしてキザっぽく前髪を払った。
「即ち、我らの実力を先達の狩人に誇示せし好機と言う事か……! 胸が躍るな……!」
「おぅ、取り敢えず足を震わせながら言う台詞じゃねェーがな」
「こ、これは武者震いと言う奴だ、緋色の盾使いよ」
ゼラフが赤面して反応すると、クーリエが「あはは~、ま~あ~、私達はぁ~、グレンゼブルの時みたいにぃ~、ちゃんと連携が出来ればぁ~、きっとぉ~、問題無いよぅ~♪」ポンポン、とゼラフの肩を叩いて宥める。
「それにこれはチャンスだぜ、シア」リスタはシアに向き直って獰猛に笑む。「【紅蓮の灯】はここに在り、って主張できる、またと無いチャンスだ。あわよくば団員を増やせるかも知れねェし、何なら“紅蓮の灯”に関する情報も舞い込むかもだ」
「……抜け目、無いね」若干瞠目するシア。「それとも、初めから……?」
「利用できるもんは何だって利用していくべきだろ。俺ァとっとと名うてのハンターになって、探し物の情報を手に入れてェんだ。テメエとは目的が違っても、道程はほぼ同じだろ? だったら迷わず突き進むべきだ、違うか?」
リスタが挑戦的な笑みを浮かべて宣言する。それを聞いた三人は、初めてリスタの目的を知れた事に驚き、ゼラフは思わず踏み込んでしまう。
「緋色の盾使いよ、失せ物探しの為にハンターになったのか?」
「あ? あぁ、そう言や話してなかったか」リスタは真顔に戻り、立ち止まって三人に向き直った。「俺ァ人を探してる。そいつらを探す為には、ハンターになるのが手っ取り早いからハンターになったまでだ」
「探してる人、ハンターって、事?」シアが小首を傾げる。
「――そうだ。もう何年も前に行方知れずになったハンターを、俺ァ探してる。テメエらも知ってたら教えてくれ。フォアンって大剣使いと、ベルフィーユって弓使いだ」
「それって――――」シアが思わずと言った風に口を開きかけた瞬間、ゼラフが「で、伝説のハンターのフォアンとベルフィーユの事かい!?」と言う声に掻き消されてしまった。
「やっぱり伝説になってるのか」ガシガシと頭を掻いて面倒臭そうに応じるリスタ。「そう、そいつらを探してる。この狩人都市・アルテミスに来たのもそれが理由だ」
「なるほどねぇ~。アルテミスってぇ~、元々ベルフィーユさんの功績を認めてぇ~、弓の神様としての称号として授けられたぁ~、【猟弓・アルテミス】から来てるもんねぇ~」のんびりした口調で続けるクーリエ。「ベルフィーユさんが元々管理していた都市だからぁ~、その名を冠してぇ~、今は狩人都市・アルテミス、って言われるようになったって聞いたよぉ~」
「おぅ、詳しいじゃねェか」若干驚いたような表情を覗かせるリスタ。「その調子でそいつらの情報も囀ってくれりゃ助かるんだがよ」
「ごめんねぇ~、フォアンさんも~、ベルフィーユさんも~、会った事は無いし~、又聞きでそう聞いただけだから~、詳しくは無いんだぁ~」
てへぺろ~っとするクーリエにリスタは「謝るこたねェよ、だからこそ俺ァ名うてのハンターになって、伝説のハンターに近い奴らからそういう話を聴くつもりなんだからよ」と、肩を竦めて応じる。
四人はそこで話が途切れ、ふと疑問になったクーリエが不思議そうに小首を傾げた。
「ところでぇ~、リスタ君~? これ~、どこ向かってるの~?」
「は? 俺が知りてェんだが」
「え? ボクも知らない」
「私は君達に付いてきただけだが……?」
四人は立ち止まり、間の抜けた顔を見合わせるのだった。
🌟後書
複数人のキャラクターに会話劇させるのが好き過ぎて、気づいたら本筋そっちのけで無限に会話させちゃうの、ほんと癖になってる気がします…w と言う訳で約2週間振りの続編更新ですが、今回は或る作品の正統続編である事を主張するように或るハンターの名前を出しました。この名前がどういう意味を持ってこの物語に関与してくるのか、ドキドキしながら見守って頂けたらと思います…!w どっかしらで出さないといけないと思っていたので、今回がそのタイミングかなぁーと。アリスさん達も何かしらの思惑ありきのラオシャンロン戦、どうなっていくのか…乞うご期待! と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!
🌸以下感想
とみ
更新お疲れ様ですvv
アリスさんなにか企んでいるのかしら?などと考えていたら…
全部ぶっ飛びましたわ。
いきなり鳥肌ぞわわーwうわわわわーこんな形で彼女たちが!
さらに読み進めるとなぜかじんわり涙までw
彼女たちのその後がちょーーーーっとだけ見えたりして嬉しかったり、
一人だけ名前が挙がらなかった彼女の心配をアレコレしてみたり…
その名前が出るだけでこんな風になってしまうのはやはり伝説のなせる技なのか…
やべぇ
今回も楽しませていただきました!
次回も楽しみにしてますよーv
2024年3月30日土曜日 20:31:28 JST
夜影
>とみちゃん
感想コメント有り難う御座います~!(´▽`*)
鳥肌ぞわわーwうわわわわーは嬉し過ぎる反応ですね…!ww
遂に正統続編と言う事を直接的に表現させて頂きました!
やっとあの作品の続きだと胸を張って言える…!ww(笑)
今回のお話で、彼女たちのその後がちょーーーーっとだけ見えました。
あの物語の後、彼女たちはどういう未来を辿ったのか、もしかしたら
その辺のお話も、そのうち語られるかも知れませんし、語られないかも知れませんw
一人だけ名前が挙がらなかった子に関しても、もしかしたらその理由が
明かされるかも知れませんし、明かされないかも知れません…!
伝説のなせる技www流石に一時代を築いた彼女らの力は侮れませんな…!ww(笑)
「やべぇ」頂きましたー!!(´▽`*) まだまだ盛り上がって参りますので、
どうぞお見逃しなくっっ!!!
今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
次回もぜひぜひお楽しみに~!
2024年3月30日土曜日 20:42:22 JST
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