呪を言祝ぐ冒険者(FF14二次創作小説)
第1話 冒険者になる為の第一歩
(名前だけ替えたリメイクです)
第1話 冒険者になる為の第一歩
「――――貴女には呪術の基礎たる魔力……体内のエーテルが足りないのです。そう、我らの一番下の弟のように……」
呪術士ギルドに入門して、最初の試練の時にそう断られたのが、今でも脳裏で燻ぶっている。
ギルドマスターのココブキさんの言葉を疑っている訳ではないし、そうなのだろうな、と言う自覚も有った。けれど、何の戦闘技術も持たずに冒険者として活動する事は出来ないと知っていたからこそ、呪術を磨いて、少しでも活動の手助けになればと思っていたのだが……
私はララフェルのデューンフォーク族の娘で、ウウイ・ウイと言う。厳密には、ララフェルとガレアン族……ガレマール帝国人とのハーフで、それ故に先天的に魔力が不足していた。
かと言って身体技術に優れている訳でもなく、額の“第三の眼”も、本来であれば優れた空間把握能力を有している筈が、ララフェルとの混血ゆえにか、その力が発揮される事は無く、徒に帝国人を想起させるだけの呪われた代物と化している。
冒険者としては八方塞がりも良い所だった。だからと言って、もう戻る家は無い。ガレマール帝国軍人の父親は出奔、デューンフォーク族の母親は何年も前に病死した。
ウルダハで生活苦に喘ぎ、いよいよ首が回らなくなってきた時、今をときめく冒険者の話を耳にした。
曰く、光の戦士の再来とされる凄腕の冒険者が居るらしい。
その者は困っている人であれば誰でも手を差し伸べて、笑顔で去って行く。どんな小さな手伝いでも喜んでしてくれるし、どんな話でも真剣に聴いてくれる。
ウルダハの噂好きの人達の間では専らの注目の的だ。今はどこそこの国に滞在しているらしい、稼ぎをするなら今はここだ、などなど……
たった一人の冒険者が、それだけ名声を得て、今なお困っている人に手を差し伸べて活動していると聞いて、私は居ても立っても居られなかった。
そうして、自分でも何か出来ないかと、呪術士の門戸を叩いた訳だが――――冒頭に戻る。
「岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち、集いて赤き炎となれ! ファイア!」
詠唱を一言一句噛まずに間違えずに唱えても、片手呪具のウェザードセプターから放たれるのは、モンスターどころか小枝ですら燃やすのが大変そうな小さな火の粉。
呪術の手法を教わってから、真っ先に中央ザナラーンの近場に居た小型のモンスターであるマーモットに基礎の呪術であるファイアを撃ち込んだ際、マーモットの鼻先を火傷させただけで、私は散々追い駆け回されて、ウルダハを護る衛士さんに助けられたと言う、トラウマにも等しい経験を植え付けられて以来、モンスターに放つ事は辞めている。
以降、ずっと西ザナラーンのスコーピオン交易所の近くに備え付けられている木人に対してファイアの練習をしている訳だが……
「岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち、集いて赤き炎となれ! ファイア!」
何度丁寧に詠唱を試みても、ウェザードセプターから放たれるファイアは火力不足も甚だしい火の粉。これでは戦いにすらならないだろう。
「はぁー……やっぱり、冒険者の才能無いのかなぁ、私……」
ぺたりとその場に座り込んで嘆きたくもなる。
このままでは何れ、ご飯を買う路銀が尽き、貧民街で乞食でもしながら過ごす事になるのだろうか。或いは奴隷としてどこかに買われるしか……
「やだやだ、絶対そんなの嫌だ! 私一人で生きていけるように、頑張らなくちゃ……!」
あまりにも惨い未来を妄想してしまって、思わず自分を鼓舞するようにペシペシと両手で頬を張ったけれど、現実はそう簡単には変わらない。
呪術士以外のギルドの門戸を叩くべきか。とは言うものの、ウルダハに在るバトル専門のギルドと言えば、剣術士ギルドと、格闘士ギルドしか残されていない。どちらもバリバリ体を動かさなければならない戦闘専門家だ。
呪術士ギルドを選んだ理由は、運動音痴由来の体力の無さ。恐らくどちらのギルドに顔を出しても、物の数分でギヴアップを言い渡さなければならないだろう。
そもそも呪術士ギルドが他のギルドへの移行を許してくれるかどうかと言う面も有る。才能が無い、技術が伴わないからと、急に辞めるような輩が、他のギルドで活躍できるとは到底思えない。
ならば今、呪術士ギルドの一員として出来る限りの努力は惜しむべきではない。分かっている、分かってはいるのだが……魔力の有無と言う潜在的な問題に対して、私は本当にこのまま努力を続けるべきなのか、ずっと悩んでいた。
「…………ん?」
ふと、スコーピオン交易所から更に北側の街道から、騒がしい声が聞こえてきた。
何事だ、と思って木人から離れて駆け寄ると、ハンマービークの群れが行商のチョコボキャリッジを襲っている場面に遭遇した。
「助けてくれーっ! 銅刃団でも何でも良いから呼んできてくれーっ!!」
行商の男が泣き喚きながら辺り一帯に大声を張り上げているが、こんな時に限って銅刃団の衛兵は見当たらないし、冒険者も通りかからない。
私しか、この場に居なかった。
スコーピオン交易所まで戻れば誰か居るかも知れない。でも、こんな時に限って頼りになる人が誰も居なかったら……
グッと、ウェザードセプターを強く握り締めると、体は自然と行商の元へと駆け出していた。
「おじさん! 私が何とかするから、その間にスコーピオン交易所に!」
掠れそうになる喉を無理矢理奮い立たせ、私は絞り出すように喚声を放った。
言っておいて何だけれど、何とか出来る実力なんて、これっぽっちも無かったし、策なんて有る訳が無かった。
でも、この場には私しか居ない。私がどこかに行ってしまえば、この行商のおじさんは助からないかも知れないのだ。
まだ冒険者なんて胸を張って言える実力なんて無い。けれど、黙ってこの場から逃げられるほど、冒険者を辞めていない!
「わ、分かった! 嬢ちゃん、無事で居てくれよっ!」
行商のおじさんは何か言いたげだったけれど、一目散にスコーピオン交易所に向かって走って行ってくれた。だったら後は、私は彼の想いに応えるだけ。
ハンマービークの数は七体。何れも私より遥かに大きくて、荷台をバキバキ壊して荷物を荒らそうとしているのが分かる。これ以上壊されたら、きっと行商のおじさんは泣くほど困ってしまうだろう。
だったら四の五の言ってる場合じゃない。冷静に……丁寧に……体内のエーテルを循環させる。
「――――岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち、集いて赤き炎となれ! ファイア!」
体内を循環していたエーテルが、ウェザードセプターの尖端に集結し、それが火の手となって放たれる!
ぼふっ、と。ハンマービークの頭に火が点り、パチパチと燃え上がった!
……って、ファイアってこんな火力じゃないよね、本来は、きっと。
現にハンマービークはフルフルと頭を上下左右に振って火の手を掻き消すと、頭を焦がした張本人である私を見つけて、敵意を剥き出しにして襲い掛かって来た!
「ウワァーッ!」
もうそこから先の事はよく憶えていない。七頭ものハンマービークに追い駆け回され、何度も転んで何度も啄まれ何度も蹴飛ばされ、死に物狂いで駆け回った末に、気づいたら崖から足を踏み外し、真っ逆さまに転落。
そこで意識を失ったんだろう。不思議な夢を見ていた。
燃えるような空から、無数の隕石が雨のように降ってくる夢。世界の終わりって、きっとこういうシーンを言うんだろうなって思える、地獄の原風景だった。
――――聞いて、感じて、考えて。
そんな声が聞こえたような、聞こえなかったような。
明朗な女声がそんな台詞を頭蓋に刻み込んだ後、私はやっとの想いで目を覚ます事が出来た。
案の定崖から落下した後みたいで、全身は軋んで痛むし、足は挫いて動けそうに無いし、服もハンマービークに散々啄まれて蹴飛ばされて、ズタボロになっていた。
「……散々だぁ……」
きっと行商のおじさんの荷物も無事ではないだろう。冒険者として、人を助ける事が出来ないどころか、自分さえ助けられないとは、ほとほと冒険者に向いていないと言うか何と言うか……
痛む体を押して何とか起き上がると、見知らぬ物体が手のひらに納まっている事に気づいた。
「なにこれ……? クリスタル……?」
キラキラ光る拳大の石、いや、クリスタル……光のクリスタルだ。いつこんな物を拾ったんだろう。崖から落ちる時に、思わず手を伸ばした先から削り取ったのだろうか。
柔らかい光を湛えるクリスタルは、揺らめく焚火のような朱色の輝きで私を魅入らせる。
とても大事な物のような気がして、私はそっと光のクリスタルをバッグの中に詰め込んだ。
「おぉーい、だーいじょーぶかーいっ?」
遠くから誰かの声が響いてきて、私はふらつく頭で何とか音源を辿って頭を傾ける。
すっかり日が暮れたノフィカの井戸に、さっきのおじさんが松明を片手に大声を張り上げている姿が視界に飛び込んできた。
「生きてるなら返事してくれーっ、流石に寝覚めが悪いんだよぉーっ!」
「あ……」
おじさんの荷物までは定かじゃないけど、おじさんが無事だった事に、涙が出そうになった。
「だ、大丈夫~! 生きてますーっ!」
掠れてくぐもった声だったけれど、おじさんには何とか届いたみたいで、おじさんのホッとした溜め息がここまで聞こえてきた。
「今よう、銅刃団に助けを呼んだから、安心しておくれよー。ごめんなぁ、あんたみてぇな若葉の冒険者さんに無理させちまってよぅ……」
「こ、こちらこそごめんなさい、お荷物、大変な事になってませんでしたか……?」
近くまで歩み寄って来たおじさんは、苦笑を浮かべてポンポンと私の頭を撫でた。
「全部無事とはいかなかったがよぅ、それでもあんたがハンマービークを引き付けてくれたお陰で、大半は無事だったさ。助かったよ、ありがとな」
「あ……」
その感謝の言葉だけで、私の涙腺が決壊するのは時間の問題だった。
一銭にもならないお手伝いだったかも知れない。
成功とは言えないお手伝いだったかも知れない。
それでも、たった一言、その言葉を受け取っただけで、あぁ、良かったなと、心の底から思えたこの気持ちは。
きっと、冒険者に向いてるんだと、そう実感させるもので。
私は泣きながらおじさんに感謝の言葉を掛けるのだった。
こうして私は、呪術をマトモに使えない呪術士として、冒険者の道に足を踏み入れる事になった。
いつか――――、一人前の冒険者に成る為の、その一歩を刻んで。
🌟後書
と言う訳で新作FF14二次創作小説「呪を言祝ぐ冒険者」連載開始です!🎉
サブっ子ララフェルのトトギちゃんを主軸に置いた物語でして、綴り始めてみるとこれ、すげー真面目な物語になりそうな予感ですw そんなつもりじゃなかった…!ww
元々の設定として、呪術士を極める為に冒険している~みたいなところから練り始めたものの、キャラクタークリエイトの時に額に第三の眼っぽいものを入れた事で、これガレアン族(帝国人)とのハーフ設定のララフェルだった面白いな…って調べていった結果、こんな形に落ち着きました…!
ララフェルとガレアン族が子を成せるか否かについては妄想で補って頂きたく…! 公式設定で「そんなの無理だよ!」って言われてたら「これは妄想の産物で産まれた物語だから大目に見てやって欲しい…!ww」って返します!ww どうかゆるして!www(笑)
どれくらいのペースで更新できるか謎ですけれど、満足するまでポチポチ書き記していこうと思います!
と言った所で今回はこの辺で! ここまでお読み頂き有り難う御座いました!
🌸以下感想
(トトギちゃん=ウウイちゃん/トトちゃん=ウイちゃんと読み替えてくださいw)
とみ
更新お疲れ様ですvv
トトギちゃん…それ、もしかして導かれてんじゃないの……
やっちゃったかぁ~割と簡単に導かれるらしいんだけどね、その後が大変だって聞くよ。十分気をつけてね。
まー導かれてもグラカン納品しかしてない(それも全てマーケット購入品)不良ヒカセンも知ってるし、なんなら森のでんp(ピー 以下自粛
今か今かと待っていた新しいお話が読める幸せに浸っております。
どんな感じになるのかなとか、ツバキちゃんとのカラミはあるのかとか興味はつきませんが、温かい目でトトちゃんを見守りたいですw
今回も楽しませていただきました~!
次回も楽しみにしてますよーv
2024年2月14日水曜日 21:53:20 JST
夜影
>とみちゃん
感想コメント有り難う御座います~!(´▽`*)
これは導かれてますねマチガイナイ!ww
先輩の言葉にはしっかり耳を傾けるトトギちゃんです…「割と簡単に導かれる?!!?!」
しかも導かれてる先輩が不良なの笑うしかないでしょwwwwww冒険してもろてwwwwwww(笑)
楽しんで貰えているようでめちゃんこホッとしております…!(´▽`*)
そう! ツバキちゃんとの絡みも、もしかしたら…! と考えている次第でして…! どうか今後とも、温かい目で見守って頂けたら幸いです…!
今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
次回もぜひぜひお楽しみに~!
2024年2月15日木曜日 7:42:35 JST
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